この文章は月刊アミューズメントジャパン誌にて連載されている「基礎から再確認 パチンコ計数管理 」の第20回、2021年1月号に掲載されたものです。
改めてウェブ上にアップすることで連載内容のおさらいになるかな、と思いますので、今後も定期的にアミューズメントジャパン誌の連載をアップしてまいります。
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皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。計数管理に対して苦手意識を持つ方も多いと思います。この連載ではそういった苦手意識を克服していただくために、分かり易くお伝えしています。
今回は遊技機シミュレーションで必要な「確変の平均継続回数の求め方」をお伝えします。
■ 平均継続回数,基本の考え方は「等比数列」
パチンコの確率変動(確変)は理論的には無限に続く可能性があります。それなのに確変の「(期待)平均継続回数」が求められるということに疑問を持ったことはないでしょうか。実はこれ、高校数学Ⅲで学習する「等比数列、無限等比級数」という考え方で説明がつくのです。(図①)
遊技機のシミュレーションでは必ず使う概念なので、できればこの計算式も理解を深めていただきたいと思います。
■ 無限に続く場合は「代数」という考え方を使う
まずはいったん、各数値をアルファベットに置き換えます。
・確変継続回数を、S
・大当たりを、a
・確変継続率を、r
つまり等比数列的に表現すると「初項がa、公比がr」ということになります。
※ここでは分かり易いように確変継続率r=50%とします。
続いて大当たりの継続回数をパターンで考えてみましょう。
単発の人 1回(a×1回)
2回の人 2回(a×2回)
3回の人 3回(a×3回)
そしてこれは無限に続き、このことを一つの式で表すとしたら以下のようになります。
S=a+ar+ar2+ar3+ar4+ar5・・・・・(以下無限に続く) → ①
数式だと少し分かりづらいのですが、「a=大当たり」に関しては必ず「大当たり回数-1回の確変を突破」することになるのです。(図②および図③参照、単発のときの突破は0回です)
ここで上記①式の両辺に「r」を掛けてみます。右辺と左辺両方に同じ数字のrを掛けるので、
Sr=ar+ar2+ar3+ar4+ar5+ar6・・・・・(以下無限に続く) → ②
となります。
この①式と②式を比べると面白いことに気づきます。なんと、①式のar以降と②式のすべてが全く同じになるのです。つまり②式のすべてが「Sr」ということなのです。(図④)
こうなると②式を①式に代入できます。
S=a+Sr
この式の左辺と右辺を入れ替えて展開していくと、
S-Sr=a
(1-r)S=a
となるので、Sすなわち無限等比級数は
S=a÷(1-r)
と展開できます。
ここでアルファベットを本来の意味に戻します。
・確変継続回数 S
・大当たり a
・確変継続率 r
ですから、
確変継続回数=大当たり÷(1-確変継続率)
となり大当たり=aは必ず毎回「1」なので、
確変継続回数=1÷(1-確変継続率)
となるのです。
■ STタイプの 平均継続回数 の計算
STタイプでよくあるのが「確変突入率100%、〇回転まで」というものです。この場合はその継続率を求めることで確変の継続回数を求めることができます。
例えば「確変中確率1/80、130回転まで」というスペックだったとします。
確率が1/80ということは逆に言えば79/80はハズレということであり、「130回連続でハズレる確率を、全体から引く」という考え方で「少なくとも1回は大当たりになる」確率を求められます。
計算は以下のとおりです。
1-(79/80)130×100≒80.5095・・・・%
これで確変継続率が求められたので、上記平均継続回数の計算に当てはめればよいです。
ST機種の継続回数=1÷(1-0.8095・・・)≒5.130698・・・回
■ 現在は複雑な機種が多い
今回の計算は「基本となる継続回数の求め方」です。しかし現在の遊技機はとても複雑なスペックが多いので、今回の基本的な考え方を応用して展開していく必要があります。
代表的なスペックとして、
・V-ST機種の計算
・2回ループ機種の計算
があります。
これらについても次回、お伝えしようと思います。
【今回のポイント】
・無限に続く数列も代数の考え方で計算できる
・STタイプのように100%突入も計算できる
・複雑なスペックの前に基本的な計算方法を理解する
(了)