マーケティングの武器
「マーケティングの4P」という考え方(戦略)があります。
・Product(製品)
・Price(価格)
・Promotion(販売促進)
・Place(流通)
の4つの視点からマーケティングを考えるもので、「適切な商品を適切な価格で、適切な販促をかけて適切な流通に乗せることで、必ず売れる」というものです。
これをパチンコ店の営業に置き換えるならば、
・製品=遊技機
・価格=玉粗利、玉単価
・販促=販促、イベント
・流通=機種配置
となるでしょう。つまり、
① 人気のある遊技機をそろえて、
② 適正な玉粗利や利益率で運用し、
② その遊技機の魅力を伝える告知やイベントを行い、
③ その遊技機の設置場所がわかりやすいシマ構成に、
すれば必ず稼働が伸びる、ということです。
もちろんこれら4Pがすべてできるとは限らないとしても、例えば価格戦略を重視する、販促戦略を重視するなどで製品面でのマイナス面をカバーするという考え方もできます。
というか、これまでのパチンコ業界はこのような戦略、施策を重視してきたといえます。
「どこに行っても同じ遊技機しかないので、差別化のために玉利の見直しやイベント、販促の強化を図ってきた」です。
しかし近年はイベントや広告宣伝の規制が強化されたことで従来的なマーケティングの4Pにおける価格戦略や販促戦略がしづらい状況です。
さて、現在では従来的なマーケティングの4Pに加えていろいろな「P」の視点も必要ではないか、という考え方が起こっています。
「加えるべきじゃないか?」とされている「P」もいろいろありますが、古典的な4Pに加えるべき新しい「P」は以下の8つが代表的です。
・Productivity and quality(生産性とサービス品質)
・Physical environment(物理的環境)
・Profile(個客プロフィール、個客管理)
・Process(コミュニケーションプロセス、販売プロセス)
・PersonnelまたはPeople(販売員、接客要員、ヒト)
・Participation(顧客参加、顧客関与)
・Package(パッケージ、包装)
・Popularity(大衆性・人気)
■ サービス マーケティングの武器
私はこのうち特に「Personnel(ヒト)」と「Profile(個客プロフィール)」に注目します。なぜならこの2つはどちらも「ヒト」に焦点を当てており、その対象が「自社」と「顧客」としているからです。
※「Package(パッケージ)」も重要です。こちらはヒトではなくお店の見た目、店内演出なので今回のテーマからとは別の意味で重要です。
<参考記事:パチンコ店の営業に必要な2つの”P”(2020.12.27)>
従来的なマーケティングの4Pは製品(商品)そのものやその売り方に焦点を当てていました。これはマーケティングの概念や理論が発達した時期から考えれば「そうなるよね~」となるでしょう。
少しマーケティングアプローチの変遷に触れておきますね。
マーケティングの概念、理論は1960年代あたりに生まれました。当時は「供給<需要」だったので「作れば、売れる」時代です。
その後に、
・作るだけじゃなく、知らせないと(売り込まないと)!
・売り込むにしても良いモノじゃないと!
・良いモノでも、欲しがるモノじゃないと!
というような考え方の変遷を経て現在のマーケティング理論が作られてきました。
お分かりですね。
全て「製品(商品)をどう、売るか」に焦点を当てています。
しかし2000年代に入り製品(商品)のコモディティ化(一般化)が進展すると「製品がイイのは当然、欲しがるモノであることも当然。ではどこで”違い”を生み出すか?」を考えます。
そしてそれはサービス業において顕著に考えるべきこととなりました。
実は上記の「新しい8つのP」は世の中のサービス産業の進展によって生まれてきた概念です。
「サービス業においては製品そのものの売り方よりも、体験を重視しなくてはいけない」
です。
話を戻しましょう。
サービス業で必要な新しい8つのP、その中で私は特に「Personnel(ヒト)」と「Profile(個客プロフィール)」に注目するとしました。
その理由は以下の通りです。
① Personnel(ヒト)
立派な外観、内装で機種もそろっているお店でも、それが繁盛店であったり逆にお客様が少ないお店があったりとまちまちです。もちろん出玉状況(≒利益率)に大きな差があるわけでもなく、です。
この差は従来の4Pだけでは説明がつきません。
結局この差は、そこで働く現場のスタッフの意識の差からきています。
企業(お店)がどれほど環境を整えても、最終的に顧客と接するのは現場のスタッフなのですから、「適切な接客スキルとモチベーションを持ったスタッフ」の存在が業績向上には欠かせないと考えます。
② Profile(個客プロフィール)
「顧客生涯価値(LTV)」という考え方があります。
「一人の顧客が長期にわたって落としてくれる利益を重視する」というものです。
成長期にある業界ならばどんどん新規開拓をして顧客を増やすことができますが、衰退期に差し掛かった業界では新規顧客が増えづらいので、今の顧客を維持し、その顧客と長期的な関係を築くことで利益を確保すべきという考え方です。
そのためには顧客一人一人を見る営業が不可欠であり、またそれには上記「Personnel」の向上も必要となります。
■ マーケティングの武器,その発想を変える
パチンコ業界では、過去、何度も危機を迎えてきました。
そしてそのたびに(意図していたかどうかは別として)「マーケティングの4P」に沿った解決がなされてきました。
・遊技機の撤去 → 新しい遊技機の導入、配置変更(製品戦略、流通戦略)
・遊技機性能の内規規制 → イベント実施(販促戦略)
・イベント、広告宣伝規制 → 低貸玉営業(価格戦略)
などです。
しかし現在はこれまでのような4Pに沿った解決策は見つかりそうにありません。なぜなら「製品や施策での差別化、違いは生み出せない」からです。
⇒ 機種構成はどこも横並び、新台導入も同様
⇒ イベントは規制が強化
⇒ 利益率に大きな違い、分かりやすい違いが作れない
だからこそ、新しい考え方の「P」を取り入れての解決を考えるべきです。今までのような遊技機やイベントに頼るのではなく、です。
頼るべきは「ヒト」です。
製品の強化ではなく、ヒトの強化です。
「業界的パラダイム(ものの見方、考え方を支配する認識の枠組み)」を変えるべきときは、「今」です。
■ 利益と稼働を両立する考え方
-稼働を上げるには、出さなければいけない
-利益を上げるには、シメなけれないけない
この思考は間違っています。
アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社では一貫して「利益を増やせば、稼働は伸びる」とお伝えしています。
なぜそう言えるのか?
その答えはこちらをご覧ください。
⇒ https://www.ab-c.jpn.com/8655