※(2023.2.4追記)2022年の年間推移に関する記事をアップ
「パチンコ物件ドットコム」というウェブサイトをご存じだろうか。一般のパチンコ店舗管理者、また店舗勤務スタッフにはあまりなじみがないと思うが、ここはパチンコ店の売りたい/買いたいを仲介するサイトなのである。
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■ 当サイトでは、パチンコ店の売買物件や賃貸物件、チェーン店一括売却のM&A案件、パチンコ店跡地、パチンコ店用地、テナント等、パチンコ店向けの物件情報を取り扱っております。
■ 週一回程度でパチンコ業界全体での出店情報・閉店情報や成立したM&A情報等をメールでお届けしますので、各種情報をお探しの法人様から好評をいただいております。
(パチンコ物件ドットコム ご利用案内より)
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さてこちらのサイト、この主目的に付随するサービスとして開店閉店情報やその統計データを公開している。
その内の「閉店情報」において衝撃的な数字が発表された。
「2022年6月末時点の閉店店舗数は482店舗、純増減(開店数29-閉店数482)は▲453店舗」
■ パチンコ店閉店 が過去最悪ペース
「6か月で453店舗の減少(※開店29、閉店482である)」と聞いてどう感じるだろうか。
イマイチ、ピンとこないならこの数字を2倍にしてもらいたい。つまり年間では453店舗×2=906店舗がなくなるペース、ということなのだ。
参考までに新型コロナの影響が直撃した2020年の純増減店舗数はというと▲582店舗(開店85、閉店667)、昨年2021年は▲575店舗(開店85、閉店660)である。(パチンコ物件ドットコム 開店閉店情報統計より)
実に2020年の1.56倍もの店舗数がなくなるのだ。
別の数字と比較してみよう。
日本一パチンコホール数の多い都道府県と言えばもちろん東京都だが、その東京都のパチンコ店は680店舗とされている。(2021年12月31日現在、全日遊連資料「全国遊技場店舗数及び機械台数」より)
ということは、だ。
東京都の店舗数以上の、東京都の店舗数の1.3倍以上の店舗数が1年間で消えるのだ。
ちなみに東北6県の店舗数が735店舗、中部6県で908店舗、これらの地域でパチンコ店がすべてなくなるレベルの店舗数の減少でもある。(店舗数は全日遊連資料「全国遊技場店舗数及び機械台数」より)
「これがパチンコの歴史上ではどのくらいの重みなのか?」
ということで過去の統計資料を確認すると、過去最悪の店舗数減少となったのは今から15年前の2007年、1,089店舗の純減だった。(全日遊連資料「全国遊技場店舗数及び機械台数」より)
ここで過去20年の店舗数の推移を以下にグラフ化してみた。(2001年~2021年、全日遊連資料「全国遊技場店舗数及び機械台数」より)
なお記事中の数字と若干の誤差があるがそれは参考資料の違いから。
2006年の店舗数は14,674店舗であり減少(純減)が1,089なので7.4%の減少率だった。
今回2022年はというと、2021年が8,458店舗でそこから906店舗の純減(予測)ということなので、その比率はなんと10.7%超となる。
「過去最悪」の2007年と同じ減少比率なら予測値は626店舗の純減になる(8,458店舗×7.4%)ので、純減数が当時の方が多いとしても市場規模からの比率では2022年の方が大きなインパクトだということがわかる。2022年の純減比率で2007年を計算すると1,570店舗の純減に相当するからだ。(14,674店舗×10.7%)
以上の数字からも2022年の純減店舗数は、パチンコ業界始まって以来の最大の危機だといえる。
※(2023.2.4追記)2022年の年間推移に関する記事をアップ
■ 2007年と2022年は状況が酷似している
過去最大の1,089店舗の純減数となった2007年とはいったいどんな年だったのだろうか。
これは今でも覚えている方が多いことだろう。
今から15年前の2007年とは、その年の9月30日をもって当時ホールの主力だったパチスロ4号機が姿を消した年なのである。(検定日の関係で10月初めまでは一部残存)
2004年に発表されたパチスロ5号機はその射幸性の低下によりホール、遊技客ともに敬遠することとなり、ホールは期限ギリギリまで4号機を使用してその間に良い機種が出ることを期待したので入替は遅々として進まなかった。
しかしいよいよその撤去期限が来てしまう。
このときは100%のホールが撤去に応じた、と記憶している。期限後に使用継続したホールはなかった。(と思う)
ちなみに今回の6号機(およびP機への完全移行)は一部ホールでいまだに守られていないことを確認しており、この点の行政の指導などはどのようになっているのか、ちょっと疑問がある。(私も某F県のお店は実際に見てきており、2022年8月19日現在もいまだにCR機、5号機が設置されている)
※(2022.9.1追記)上記F県のホールは2022.8.31をもって閉店となっている。
結局期限までに「良い機種」は登場せずにパチスロ市場は急速に冷え込んだ。当時私は島設備メーカー株式会社エース電研の関連会社に所属していたのだが、とにかくスロットコーナー→パチンココーナーへのシマ変更工事が多かったことを記憶している。
そして今回である。
今回もCRがPになり5号機が6号機に切り替わるという、遊技機のスペックに大きな変更となったタイミングだ。
過去何年も(それこそ20年くらい)、台売上も台粗利も20円スロットが4円パチンコを上回っていた。
しかしその関係性が崩れている。
㈱SUNTACの提供する業界横断データ「TRYSEM」によればこの関係性が逆転したのは2021年の5月からだった。
以降、20円スロットが4円パチンコを超える台売上/台粗利となった月はない。
そのような遊技機事情から1月31日の撤去期限をなんとかやり過ごしたお店も「これ以上の回復が見込めない」と判断して、今回のような大規模な閉店ラッシュになっているのだろう。実際、月別の閉店数は2月末以降高い水準で推移している。
2007年は一気に1,000店舗以上の純減ラッシュとなりその後回復することなく今に至る。
■ この先はどうなるか
この先も設備への投資が嵩む。
・スマートパチスロへの移行(2022年11月~)
・スマートパチンコへの移行(2023年1月~)
・新紙幣への対応(2024年上半期~)
スマパチ/スマスロに関しては、発売開始直後すぐに対応する必要はないかもしれないがいずれは行わなくてはいけない。現行機種とスペック面でちょっとした差別化が噂されており、いずれは対応せざるを得ないのだ。
新紙幣対応は絶対だ。
これらへの投資、台あたり○○万円で総額ン千万~、店舗の規模によっては数億円とされる。
さらに新型コロナで受けた融資の据え置き期間も終わり返済が始まる時期でもある。
「こんな投資をして果たして今の市場状況で回収はできるのだろうか」
このように考えるホール経営者は多いだろう。
よって閉店数は今後も前半と同じペースかそれ以上で推移すると考えられる。
業界として非常に憂慮すべき問題だ。
■ パチンコ店閉店 、ライバルが減ることはプラスではない
「店舗数が減ることがなぜいけないのか?競合が減るのだから生き残れればチャンスが大きくなるのではないか?」
こう考える方もいるかもしれない。
実はこの問題、まさに「部分最適は必ずしも全体最適とはならない」ことにつながる。(経済学でいうところの「合成の誤謬(ごびゅう)」である)
店舗数が減ることの問題は、「人口の減少がなぜいけないか?」というのと問題の質は同じである。
少子高齢化では社会全体の活力が低下していくのでサービスや労働力の供給力が低下する。また世界の中での日本という国の発信力やパワーも低下していく。
これと同じで店舗数が少なくなる=業界規模が縮小すると社会(商圏)への訴求力も影響力も店舗の活力も小さくなる。
業界の声が広く伝わらなくなる。
それは回り巡って、生き残った店舗(企業)にもマイナスの効果として波及してしまう可能性がある。
■ まとめ
2022年の年初に㈲TKC髙橋正人氏のTwitter Spacesに呼ばれ、私はその中で「今年は1,000店舗の閉店も考えられる~」と発言したところさっそく引火、プチ炎上をした。
しかしそれが現実味を帯びてきている。
今回は発表された数字を見て、過去の状況と現在を比較しながら今後を考えてみた。
店舗数減少の趨勢は個人レベルで打開できる問題ではないだろう。
しかし一人ひとりが、一店舗一店舗が遊技客の支持を得る努力をし、「パチンコという遊びの持つ魅力」を表現する努力をすることで未来は変えられる、と考えている。
がんばろう、パチンコ。
※(2023.2.4追記)2022年の年間推移に関する記事をアップ
(了)