2022年8月、私は「2022年、パチンコ店の閉店ペースが過去最悪に迫る」という記事をアップした。
・2022年6月時点での純増減が▲453店舗、年換算で▲906店舗の純減ペース
・これはコロナ禍が直撃した2020年の純減店舗数(▲582店舗)や2021年の純減店舗数(▲575店舗)よりも多い
・過去最悪だった2007年に匹敵(2007年は▲1,089店舗)
・減少比率でいえば2007年よりも2022年の方が高くなる(悪化している)
(2022年、パチンコ店の閉店ペースが過去最悪に迫る 2022.8.20より)
さて2023年が幕を開けて1カ月、2022年の各種数字で速報値が届いてきている。
さっそくその中で2022年の店舗数がどうなったか?を確認してみることにしよう。
2022年純減店舗数は「771店舗」
パチンコ物件ドットコムというサイトがある。パチンコ店のM&Aを手掛けるサイトでシーズン株式会社という法人が運営しており、「開店閉店情報統計」というページでは2012年から現在までの開店店舗数と閉店店舗数を数字とグラフで掲載している。
さてこのサイトで2022年の純減数を確認する。
・開店 : 68店舗
・閉店 : 839店舗
∴ 純増減 ▲771店舗
(パチンコ物件ドットコムのデータをもとに加工)
私は2022年8月の段階で上半期の数字を用いて、「年率換算」で▲906店舗の純減を予測した。
しかしその予測は外れ、下半期では開店の増加と閉店の減少により純減のペースが鈍化となっている。
ただし純減店舗数が▲771店舗ということはそれでも過去最悪の減少ペースだったことは否めない事実である。
過去最悪だった2007年が▲1,089店舗であり前年(2006年)の14,674店舗からの減少率は7.4%でしかないのだが、2022年はその前年(2021年)が8,458店舗なので、771店舗の減少ということは減少率が9.1%となる。
2007年:100%-{(14,674-1,089)÷14,674}=7.42%
2022年:100%-{(8,458-771)÷8,458}=9.12%
実に、前年比90%の規模になってしまっている。
市場規模を測る客観的数字として日本生産性本部が発行するレジャー白書やダイコク電機の発行するDK-SIS白書があるが、これらは早くて夏以降の発表となるので売上やユーザー数という視点での見方はできない。しかし間違いなく市場規模は縮小している。
とはいえ確かに7月以降の下半期でその減少スピードは鈍化した。開店店舗数も多くなり出店意欲のある法人も見受けられそうだ。これは今後に(少しは)明るい材料となるだろうか。
実はそうではない、と考える。
季節的に下半期は出店が多く、閉店が少ない時期
以下のグラフを見てもらいたい。これは過去5年間(2018~2022)の、純増減店舗数をグラフ化したものだ。
(パチンコ物件ドットコムのデータをもとに加工)
ザックリと、どの年も2月~4月あたりに大きく減少し後半ではその数が縮小していることがわかる。
2020年のみコロナ禍が直撃したことで後半にやや多いようにも見えるが、もう少しわかりやすくグラフ化してみよう。
次のグラフは上半期と下半期の2軸で棒グラフ化してみたものであり、こちらを見れば「前半に多く減少する」ことが一目瞭然だ。
(パチンコ物件ドットコムのデータをもとに加工)
たしかに2020年は下半期の減少数も多いがそれでも上半期の方が多いことがわかる。
またこのようなグラフ化により、2022年の純減数は過去5年間で最も多いこともわかるだろう。
純減数が上半期で多い理由(下半期では少なくなる理由)として考えられるのは、
・年末年始を営業して、2月~3月での閉店を決断するから
→ 下半期よりも上半期で閉店を選択する。
・下半期は8月と12月の2回、グランドオープン機会があるから
→ 下半期に新規OPを考える企業が多い。
だと考えられる。
2023年1月はどうか
現在は2023年2月4日なので1月末時点もどうなっているかがわかる。
2023年1月の開店/閉店は以下のとおり。
開店 : 7店舗
閉店 : 54店舗
純増減 : ▲47店舗
開店店舗数が2022年1月の4店舗から2023年は7店舗となったことで純減店舗数は2022年よりも少なくなったが閉店店舗数は54店舗と同数である。やはり閉店する店舗が多いという流れは変わっていない。
過去6年間の1月の閉店店舗数 (年間での月別閉店数比較での順位)
・2018年1月 37店舗 (12位)
・2019年1月 47店舗 (4位)
・2020年1月 37店舗 (11位)
・2021年1月 28店舗 (12位)
・2022年1月 54店舗 (9位)
・2023年1月 54店舗
2019年こそ年間で4番目に多い閉店数となっているが、そもそも実は、1月という月は閉店店舗が少ない傾向がある。閉店するという選択も年末年始直後ではなく2月~3月にする傾向が強いからだ。
その、「少ないはずの」1月で既に54店舗の閉店数ということは、2023年もかなり厳しい閉店数を記録すると考えられる。
まとめ
2022年の年初、私は㈲TKC髙橋正人氏のTwitter Spacesに呼ばれ、そこで「今年は1,000店舗の閉店も考えられる~」と発言した。
結果は▲839店舗の減少、純増減は▲771店舗である。
予想は外れた。
しかし前年(2021年)まで毎年500店~600店の閉店で推移してきたこの数年間から大きく閉店店舗が増えるという見通しはあっていたことになる。
2023年2月(正確には1月末)、広告宣伝に関する統一見解が発表され、その基準は大幅に緩和された。これにより業界全体が活性化されるという見方とともに、より強弱の差が広がることを懸念する声もある。つまりもっと閉店数が加速するという見方だ。
店舗数減少の趨勢は個人レベルで打開できるものではないかもしれない。
しかし一人ひとりが、一店舗一店舗が遊技客の支持を得る努力をし、「パチンコという遊びの持つ魅力」を表現する努力をすることで未来は変えられる、と考えている。
がんばろう、パチンコ。
(了)