毎週水曜日更新、「 コンサルティングの現場 より 」
このコラムは毎週水曜日に更新します。
「春は別れと出会いの季節」と言われます。時期的に卒業と入学があるのでそうしたように言われるのでしょう。
さて、ホールの現場ではそういった季節柄とは無関係に頻繁にスタッフの入れ替わりがあります。これが一般スタッフならまだしも、役職やそのポジションに近い人員の入れ替わりが多いのが多くのお店での悩みではないでしょうか。
今回は、なぜ役職者の離職が多くなってしまうのかについて考えてみます。
辞めていく理由は給料じゃない
ホールの現場でよく聞く声、それは、
・人手が足りない
です。
予算が少ないので人件費に多くを割くわけにはいかず、スタッフ数はオペレーションが回るギリギリに設定したうえで足りない分を役職者の頑張りで補うといったかたちになり、どうしても役職者への負担が重くなります。
こういったことが引き金になり、給料に対する責任や仕事量の釣り合いが取れないことで辞めていく―。ほとんどの方が「役職者の離職が多いのは仕事量と給料のバランスに問題がある」と考えているのではないかと思います。
私の知る厳しい状況のホールではよく、
「こんな給料じゃやっていられないですよ!」
という言葉を聞きます。
そして、
「主任も班長も本当によくやってくれています。会社ももう少しこの辺りを見てやってほしいです。」
という言葉も聞きます。
それでは、もしも今と同じ仕事量のままでも給料がアップしたらこの状況は改善されると思いますか?
おそらくそんなことはないです。一瞬やる気が出て改善されるように見えても、すぐに同じように不満がたまって結局は辞めていくことになります。
実は仕事に対する不満はお金では解決しないのに、このような間違った認識でいるから役職者の定着率が悪いのです。
ホールの現場で本当に必要なこと、それは「仕事に対するモチベーションを高めること」です。
生産性はリーダー次第
1924年~32年にかけて、アメリカで通称「ホーソン実験」というものが行われました。
この実験自体は、
・ヒトは賃金、労働条件によって生産性、意欲が変化する
・賃金、労働条件が低いと生産性や意欲は減退し、高いと増進する
という仮説を実証するために行われたものでした。
しかし結果は、
・ヒトは賃金、労働条件によって生産性、意欲は左右されない
・生産性や意欲は人間関係や個人の労働観に左右される
という、仮設とは真逆のことを実証する結果となったのです。
また、劣悪な労働条件であってもその中のリーダー的存在の力量によって、むしろ労働生産性が上がることも確認できました。
このことから、「賃金や労働条件が改善されても、働く意欲に変化は起こせない、もっと別のこと(対人関係や個人の労働観)が必要である」という結論が導き出されました。
ヒトが仕事を辞めてしまうのは、突き詰めて考えれば「ここで働くということの意義が見えなくなったから」といえます。決して給料などの労働条件が悪いからではないのです。
むしろホーソン実験のように強力なリーダーシップを持つリーダーがいれば、少々の悪条件ならば逆に「よし、やってやろうじゃないか!」と気持ちを奮い立たせることもあります。
結局はスタッフにしろ役職者にしろ、辞めていくのはリーダー=店長の管理、手腕に問題があるということになります。
「人材がなかなか定着しない」と嘆く前に、まずは店長自身の言動を見直すべきです。
部下のやる気を引き出す、仕事に対するモチベーションを引き上げることに注力すれば役職者の離職は必ず減らせますよ!
(了)