2020年からの新型コロナ禍を機にサービス業全般が苦境に立たされ、パチンコ店店舗数も大きく減少しました。これは、ザックリと2,000店舗減ればそこに在籍していた社員さんも退場を余儀なくされることを意味します。
まだ若い社員さんであれば次の仕事をという選択もありますが、例えば店長や部長などある程度年齢を重ねた方はなかなか潰しが効かず苦労するかもしれません。
そこで、退職したパチンコ店の店長や部長クラスが次の仕事としてそのスキルを活かそうと、パチンコ業界専門のコンサルタントに転職する事例も散見しています。
私自身ももちろん17年前にその決断をしたのですが、あまりにも安直に転身を図る事例からの失敗を見てきていることから、ここで私自身の経験(良いことも、良くないことも)から、「今、もしくは近未来にコンサルタントへの転身を考えている人」に(私なりの)アドバイスをお伝えしたいと思います。
強みと弱みはオモテウラ、過信しちゃダメ
パチンコ店の店長がパチンコ業界専門のコンサルタントに転職する場合、もちろんこれまで蓄積した多くの専門知識や経験を活かすことができますが、逆にそれが足かせとなって「弱点」となってしまう場合が多くあります。
広範囲なビジネス知識の欠如
パチンコ店の営業にはある種特殊な知識と経験を必要としますが、一方でコンサルタントとしては、他の業界と共通するビジネスの基本原則についての深い理解が必要となることもあります。
これはマーケティング、財務、戦略論、組織論といった知識ベースのことを指すのですが、これらのスキルはこれまでのパチンコ店運営に直接関連しないため持ち合わせている方が非常に少ないと感じています。「戦略?そんなものより実践だよ!」的な思考でイケイケドンドン、コンサルタントとして必要な知識よりも勘と経験側を重視してきた方にはコンサルタントとしてやっていくのはかなり厳しいです。
「パチンコ営業は特殊なんだ!そんな理論よりも実践経験だ!」
こういう思考ではコンサルタントにはなれません。
適応性
パチンコ店の店長としての経験は非常に価値がありますが、その経験は特定のシチュエーションや環境に制限されている可能性があります。他の店舗や地域で働く経験がなければ、自身の提案や戦略がすべての状況に適応できるわけではないかもしれません。
私自身、コンサルタントへの転職時点では地方の中規模店舗とそのエリアの長レベルの経験しかありませんでしたので、都市部や大型店の方と接したり店舗調査をしたりするたびに「全然違うんだな」と思ったことを覚えています。
当時はまだ33歳、若手と言ってもイイでしょう。だから「勉強」も素直にできました。翻って年令を重ねた(であろう)店長、部長は顧客にとっては「即戦力のアドバイザー」です。全く経験のない環境下のクライアントに「即戦力として期待される」ことに応えられますか?
私は自分の強みとしての「地方、中小の業績向上策に強いこと、数字に強いこと、カネをかけないで立て直す」というスペシャリスト面を持ちつつも「どんな店舗でも改善提案ができる」ゼネラリストな部分を意識して伸ばしてきました。
繰り返しますが、「これまでの経験」は一つの強みになるかもしれませんが、逆にそれ「だけ」になってしまっている可能性があります。
人間関係の構築
コンサルタントとして成功するためには新たな人間関係を築く能力が必要です。これまで会社員として「新人さんを迎え入れる」立場だった店長、これからコンサルタントとしてやっていくということは「常に、新しいところに入っていく」スタイルとなります。
店長(部長)として人と接しているうちに、知らず知らずにやや傲慢な接し方をしてきたことはありませんか?今後はその彼らを相手にしていくのですよ。新たなビジネス関係を構築し、信頼を築くためのスキルが未熟な場合、成功するのが難しいでしょう。
たしかに有名なコンサルタントには傲慢な態度をウリにしている方がいることも事実です。しかし彼らはそういった態度を取るに値する結果も出してきたのでしょう。だから支持する方がいます。
「私にはこれまでの経験があるのです」、その経験を担保する何かはありますか?自分の思い込みではなく周囲の評価として、ですよ!それも目に見える周りではなく、見たことも会ったことも話したこともない相手から、の評価です。
更新された知識
どんな業界も絶えず変化しており新しい規制、技術の進歩、消費者の嗜好の変化など、業界のトレンドを把握し続けることが重要です。
退職すると最新の情報に触れる機会が減ってしまうかもしれません。
例えば会社の設備として閲覧することができた業界標準データ、商圏の客数、組合関係、その他さまざまな情報は「店長だから」手に入れることができました。
今後はイチからその情報網を構築していかなければなりません。もしもその努力を怠ってしまうと、あなたのアドバイスは時代遅れのものになるかもしれません。
まとめ
以上、少々危惧することをまとめました。
コンサルタントになるというのは、実はけっこう大変なんですよ。人脈、スキル、情報、これらをすべて「自分ひとりで作っていく」、これまではその置かれた立場で自然に手に入っていたものを自分ひとりで、です。
これらのポイントを克服するためには、
・ビジネスの基本スキルを学び、
・絶えず市場の動向を追いかけ、
・新たな人間関係を築く能力を育てる
ことが必要です。
(了)