業績を向上させるためには自店の置かれた環境を客観的に捉え、その状況を理解し、それに合わせて戦略を立てることが必要です。
自店の置かれた状況を理解するためのツールとして最もポピュラーで、また実際によく活用されているのが内部要因と外部要因を切り分ける「SWOT分析」ですが、そのときに外部要因をより深く掘り下げるための分析手法に「PEST分析」というものがあります。
ちなみに内部をより深く掘り下げる分析手法が「VRIO分析」です。こちらは別の機会にお伝えしようと思います。
整理すると以下のような関係性となります。
今回は外部環境を客観的に分析する「PEST分析」について確認していきます。
PEST分析はビジネス環境を理解し戦略立案に役立てるためのフレームワークで、その名称は政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の頭文字をとったものです。
1.政治(Political):
政府の政策や法律、規制など、ビジネスに影響を与える政治的な要素を分析します。具体的には税法、労働法、環境法などが考慮されます。
2.経済(Economic):
経済的な要素とは経済成長、インフレ率、雇用率、物価、金利などのマクロ経済状況を分析します。これらは消費者の購買力やビジネスの投資状況に影響を与えます。
3.社会(Social):
人口動態、文化的な傾向、生活スタイルの変化、教育水準などの社会的な要素を分析します。これらは市場のサイズや消費者のニーズに影響を与えます。
4.技術(Technological):
新しい技術の進歩、イノベーション、技術の生産性や配送に対する影響などを分析します。これらはビジネスの効率性や製品開発に影響を与えます。
PEST分析をすることで自社の置かれた環境に対して「少し広い目」を持つことができ、自社の位置をより良く理解し、適応し、将来の機会や脅威を予測するのに役立つツールとなります。
パチンコ業界でPEST分析を活用する
それではパチンコ店においてPEST分析をどう活用するか見ていきます。
1. 政治(Political):
政治的要素は許可営業であるパチンコ業界にとって重要な要素の一つです。法律規制が厳格で、またその規制(内規変更、解釈変更を含む)は頻繁に変更されるため常に最新の情報を取得し続ける必要があります。もちろん広告宣伝関係や遊技機のスペック規制も該当しますし、健康増進法の影響も大きく受けました。2024年には新紙幣への対応も迫られています。
法律の変更は店舗運営に直接影響を及ぼすためこれらの動きを見逃さないようにする必要があります。例えば賞品交換制度などの規制は、収益性に直結します。また、ギャンブル依存症対策としてなどの動きも業界のイメージや信頼性に影響を与えます。
2. 経済(Economic):
経済的要素は業績に直接の影響を与えます。景気動向や失業率の変化などは遊技客のパチンコへの支出や来店頻度に大きな影響を与えます。例えば経済が好調な時期には余裕が増え、パチンコへの支出も増加する可能性がありますが、経済状況が悪化した場合、パチンコに対する支出は減少し、その結果売上が減少する可能性があります。
ひと昔前は「パチンコ業界は不況に強い」と言われていたのですが、2000年代以降の新自由主義的経済政策は二極化を作り出し、不況となるとパチンコへの支出も削減されていくようになりました。
また、人件費にも影響します。経済が好調なときには人材確保のために高い賃金を提示しなければならなくなり、販管費の高騰が利益面の業績に影響を与えます。
経済面が好調なときは経費がかさみ、不調な時は売上低下を招くような関係です。
3. 社会(Social):
社会的要素は人々のライフスタイル、価値観、人口動態などを指します。近年、ギャンブルに対する社会的な意識が変化し、若者のパチンコ離れが進んでいます。このような社会的な動向に対応するため、パチンコ店は新たな顧客層を開拓するための戦略を考える必要があります。
たとえば、パチンコ店はゲーム性を高め、若者にとってのエンターテイメントスポットとしての位置づけを強化することで、新たな顧客層を獲得することが可能です。また、外国人観光客向けのサービスを強化することも考えられます。外国人観光客は日本の文化体験としてパチンコを楽しむことがありますので、英語対応や外国人向けのイベントを開催するなど、彼らに対する配慮も必要となる時代かもしれないです。
4. 技術(Technological):
技術的要素は新たな技術の導入やデジタル化の進展を指します。やはりインターネットの普及とその技術的進化は様々な業界の「当たり前」を変えてきました。ある調査では10代の若者の30%が「BD(ブルーレイディスク)を知らない」と回答したとのことです。時代はオンライン、ストリーミング視聴なのでディスクなどもはや必要ないのです。
10代男女の3割が「ブルーレイ」を知らない 認知率は女性の方が高め 所持していたことがある人は半数未満(Yahoo!ニュース)
パチンコ店における技術革新を取り入れるとすれば、店舗運営におけるICTの活用になると思います。顧客データの管理や分析、効果的な広告配信やデータ公開など、デジタル技術を活用することで業務効率化や顧客満足度向上の実現が期待できます。
戦略はフレームワークを活用して立案する
PESTの枠組みを活用することでSWOT分析での外部要因の確認がスムーズになり、自社を取り巻く環境の理解が進むことで適切な戦略と方向性を立てることが可能になります。
PEST(およびVRIOとSWOT)はどの業界でも活用できる優れたフレームワークです。パチンコ業界においてもこれらの分析を活用することで業界を取り巻く環境を適切に把握することができ、自社(自店)の位置づけや方向性を明確にすることができます。
PEST分析は決して難しくありませんし、難しく考えることでもないです。将来を予測し、戦略を立てる力が身につくこの手法、業績向上のためぜひ活用してみてください。