初動のミスは痛恨の一撃となる場合が多い。企業行動では予測しえない様々な危機が訪れるものだが、その危機の回避、鎮火となるかは初動で決まる。
昨年末に週刊文春が報じたダウンタウン松本人志氏による性加害疑惑。これに端を発する形で追加記事や関連疑惑が出ているが、その中でも2024年1月27日にXに投稿されたプラスマイナス岩橋氏による告発は当人がすぐに投稿削除をしたにもかかわらず一気に広がってしまった。
岩橋氏は過去に受けた暴力行為についてをXに投稿をしたもののすぐに削除。その削除の理由を「吉本の副社長ほかが来て説得されたため」とのXに投稿したので、「これはパワハラ」「吉本は芸人を守らずに制作会社を守る姿勢」などの非難が集まり、元々の投稿時よりも注目を集める形となってしまった。
「注目を集める前に抑える」、こう考えたであろう吉本興業側の対応は間違いだったと思われるが、これは「ストライサンド効果」を知っていれば防げたはずだ。
今回はこのストライサンド効果を改めて確認してみようと思う。
ストライサンド効果:情報を隠そうとすることがかえって広める現象
インターネット時代においては情報の拡散は驚くほど迅速で広範囲である。特に情報を隠そうとする試みはしばしば逆効果となりその行為が逆に情報が広まる契機となるものである。
この現象は「ストライサンド効果」として知られており、今日では多くのオンライン環境で顕著に現れている。
名前の由来
「ストライサンド効果」という言葉は、1990年代にアメリカの歌手・女優であるバーブラ・ストライサンドに由来している。当時バーブラ・ストライサンドは自宅の写真がオンラインで公開されることを望まず、彼女の住宅に関する写真が一般に知られないようにしようとした。
しかし、彼女がこの情報の非公開を要求したことが逆効果となり、彼女の住宅に関する情報は大々的に広まることとなる。この出来事が「情報を隠そうとする試みがかえって情報を広めることがある」ことを示す最初の例となった。
ストライサンド効果のメカニズム
ストライサンド効果のメカニズムは比較的シンプルだが、非常に効果的。以下は、この効果が発生する一般的なプロセスである。
① 情報の隠蔽
ある不都合な情報が公になりそうになり、その情報を隠そうとする行為が始まる。これは通常法的手段や脅迫などの方法で行われるが、この際、当事者はこの不都合な情報を公には知られないようにするつもりで行動する。
② 情報の注目
情報隠蔽の行動開始が公になると、「なぜだ?」と人々の関心が高まる。人々はなぜその情報が隠されているのか、何がそこに含まれているのかについて疑問を抱くことになるからである。
③ 情報の拡散
この興味が情報を広める原動力となる。人々は情報を共有し、拡散させることに興味を持ち、ソーシャルメディアなどのプラットフォームを活用して情報を広めていく。
④ 情報の普及
情報は急速に広まり一般の人々やメディアによって取り上げられ、本来隠されていた情報が広く知られることになる。
具体例
ストライサンド効果は多くの具体的な例で確認されており以下はいくつかの例となる。
セレブリティの私生活:
有名人が自分の私生活を隠そうとした場合、その試みはしばしば逆効果となり、逆にメディアの注目を集めることになる。たとえば有名なセレブリティがスキャンダラスな写真を隠そうとした場合、その写真がインターネット上に広まることがある。
企業の隠蔽:
企業が製品の欠陥や安全性の問題を隠そうとした場合、その情報がリークされて大きなスキャンダルに発展する。この場合、企業の信頼性が大きく損なわれることになる。
ストライサンド効果の影響
ストライサンド効果は情報の自由とプライバシーの対立を浮き彫りにする。情報の隠蔽が必要な場合もある一方で、情報を隠そうとすることがかえってその情報を広めるリスクがあるということだ。この現象はインターネットとソーシャルメディアの普及により、より顕著になってきている。
ストライサンド効果はまた、個人や組織が情報をコントロールしようとする試みが、時には逆効果となることを示している。情報を公にするか非公開にするかの判断は情報の性質や文脈によって異なるが、情報の拡散が迅速かつ広範囲に行われる現代社会においては「隠す」という選択には慎重な考慮が必要であろう。
まとめ
ストライサンド効果は情報の拡散とプライバシーの対立を強調する重要な現象である。情報の隠蔽は、逆に情報を広める契機となることがあり、個人や組織は情報の公開と非公開について慎重な判断をする必要がある。インターネット時代において情報の流れをコントロールすることはますます難しくなっており、この効果を理解することは重要だといえよう。
WEB2.0時代の現代社会、双方向対双方向のコミュニケーションが可能となり、過去の「テレビ新聞、大手メディアの一方通行による大本営発表」に与しない意見を発することができるようになっている。
過去には「人のウワサも七十五日」とばかりに徹底的に抑え込めたことも今は難しいという認識を持つことが必要である。
パチンコ業界も他人ごとではない。何事も後手後手に回ると悪手ばかり選択する羽目になってしまうものであり、何かの問題があった場合は真摯に対応が求められる。
「ストライサンド効果」、しっかりと認識してほしい。