毎週水曜日更新、「 コンサルティングの現場 より 」
このコラムは毎週水曜日に更新します。
私がパチンコ店を退職してコンサルタントとなってからずいぶん年月が経ちました。それなりに長い期間コンサルタント生活をしていると色々な人と出会います。中にはいわゆる「出戻り」で、一度退職してまた戻ってくる方もいます。
そういった「出戻り」の方はたいてい「よし、今度こそ!」という気持ちが強く、上昇志向を持ち、強く結果を求める傾向があります。
私の支援先にも最近、出戻りで再入社した人がいました。ちょうど役職者の退職もあり人手が不足していたこともあって、退職時の肩書は主任でしたがいったん外に出たことでいろいろな経験を積んだこともあり、副店長待遇で迎えることになりました。退職した役職者は遊技機のメンテナンス業務を任されていたので、その穴を埋めることを期待されての再入社です。
さて、遊技機の担当となった再入社の彼は張り切りました。「自分の力でこのお店の稼働を上げてやる!」という強い気持ちを前面に出して、毎日遅くまで遊技機と格闘です。しかしその思い、行動とは裏腹に稼働はどんどん落ち込んでいきました。
このお店には管理者としてベテランの店長がいました。この店長は「今の時代、昔の考えを押し付けても仕方がない、若い人の力に任せたい」と考えており営業面にはほとんど口出しをしませんでしたが、さすがに業績が低下したことでその副店長と改めて面談をしました。
しかし面談で副店長は「自分にもう少しだけ任せてほしい」と強く訴えて、ベテラン店長のアドバイスを受けようとはしませんでした。そしてますます業績は悪化していくことになるのです。
そこで今度は私が面談をしました。業績がどんどん悪くなっていることはしっかりと認識しており、
・期待されて再入社したのでその期待に応えなければと思っていたこと
・アドバイスを受け入れたくないのではなく、自分の責任を強く感じたからこそ自分の力で戻したいと思っていたこと
を話してくれました。
私は「自分ひとりで悩まずに、素直に受け入れるように」、「他人の意見を受け入れることは、“負け”じゃない」と話し、その後は店長と遊技機の扱い方を議論していくことになりました。まだまだ業績の向上とまではいきませんが、まずは悪化に歯止めがかかった状況です。そしてこの副店長も今は他人のアドバイスを素直に聞くようになりました。
今回のように「自分が!」という強い思いを持っている人はその反面、プライドも高いものです。そのため、良いときはいいのですが悪くなってくると逆に意固地になる傾向があり、ますます意見を受け付けなくなっていきます。他人の意見を受け入れることは「自分が間違っていた」とされるのと同列に解釈してしまうからです。
「出戻り再入社」でなくても、例えば中途で役職として入社した人にも同じようにプライドが高い傾向があるものです。しかし、そのプライドは得てして「邪魔」でしかありません。
「経験は最良の教師である。ただし、授業料が高すぎる」
イギリスの思想家、カーライルの言葉です。今回の副店長は見事に改心して前を向く姿勢をもってもらえましたが、そこに至るまでには会社も結構な痛手を被りました。
出戻り再入社にしても中途入社にしても、また叩き上げ出世でも同じです。過去の成功体験、自分の考えに固執しないで「素直な心」をもって他人にどんどん意見やアドバイスを求める姿勢を持ってほしいと思います。