ベース の概念を理解しよう!
この文章は月刊アミューズメントジャパン誌にて連載されている「基礎から再確認、計数管理」の第4回、2019年9月号に掲載されたものです。
改めてウェブ上にアップすることで連載内容のおさらいになるかな、と思いますので、今後も定期的にアミューズメントジャパン誌の連載をアップしてまいります。
=============================
皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。2019年5月号より「基礎から再確認、計数管理」と題して、パチンコ計数管理の誌上セミナーを連載させていただいております。今月号もよろしくお願いいたします。
前回は遊技機データで一番といっていいほど重要な「S」と関連する「TS」、そこから計算できるBOとTO(T1O)について学習しました。4回目の今回はベース(B)に関連する項目について理解を深めます。
■ ベース (B)
ベースとは「特賞中を除いた出玉率」のことです。「出玉率」なのですから「セーフ÷アウト×100」で求めることができ、そのうち「特賞中を除く」なので計算式は、
ベース=(特賞中を除く)セーフ÷(特賞中を除く)アウト×100
です。
ベースの考え方として、例えばある台のベースが30%だった場合を考えます。この場合遊技客は打ち込んだ玉の30%の払い出しを受けるわけですから、1分間(打ち込み100個)あたりでは30個の払い出しを受けることになります。
■ B%
ベースが「特賞中を除いた出玉率」なのに対して、B%はベースとは逆に特賞中を除いた「吸い込み率」のことです。計算式は、
B%=100%-ベース(%)
で、打ち込んだ玉に対して実際に減らす分を指します。
例えばベースが30%の台を10分間だけ打ち込み、そのとき、台の払い出し口をオシボリなどでふさいでいたとします。打ち込んだ玉数は10分間なので1,000個ですが、打ち込んだ後でオシボリを取り除くと300個の玉が戻ってきます(ベースが30%なので)。
つまり、「自分は1,000個の玉を打ち込んだが、実際に減らした玉は700個」ということであり、これが「吸い込まれた玉数」で、アウト100個あたりで考えると「吸い込み率」となります。
ベース、B%とも百分率で表し(%表記)、ベースとB%の合計は100%となります。
例) 特賞中以外のアウトが20,000個、特賞中以外のセーフが6,000個のとき
・ベース=6,000÷20,000×100
=30%
・B%=100%-30%
=70%
■ B%から1,000円スタートを計算する
B%を理解することで遊技客目線の回転数、すなわち「1,000円スタート」を計算することが出来ます。例えば以下のような数値があったとします。
・S 5.20回
・B 30.0%(=B% 70.0%)
B%は「アウト100個あたりに吸い込まれた(減らした)玉の比率」であり1,000円での貸玉数は250玉なので、
・250玉を元手に遊技を開始して70%ずつ減らしていくと、最終的に何玉を打ち込むことになるか
が計算できます。
250玉÷70.0%≒357玉
このように「250玉を元手にすると最終的に約357玉、つまり3.57分遊べる」となります。そしてSが5.20回の状態で3.57分の遊技時間なので、
・5.20回×3.57分≒18.56回
と計算することが出来るのです。
■ BY
BYとは「有効スタート以外の払い出し」のことです。
スタート入賞口の払出個数が4個の場合、アウト玉数100個あたりのスタート回数が5.0回であるならば、「5.0回×4個=20個」の払い出しがスタートによって発生します。つまりスタート回数によるベースが20%あるということであり、このとき実際のベースが30%の場合、「30%-20%=10%=10個」がアウト玉数100個あたりの有効スタート以外の払い出しです(アウト玉数100個あたり10%の払い出しなので10個といえる)。よって計算式は、
BY=ベース-(アウト玉数100個あたり回転数×賞球数)
です。また、上記の計算式を展開して右辺と左辺を入れ替えることでもベースを求めることができます。
ベース=(アウト玉数100個あたり回転数×賞球数)+BY
このベースのもう一つの計算式からスタートやBYについてのデータチェックが行えます。例えばある機種(スタート賞球4個)の平均スタートが5.5回/分、ベースが33.0%だったときに、そのうちの1台のデータが
スタート回数 5.4回/分
ベース 40.0%
だった場合、
ベース=(アウト玉数100個あたり回転数×賞球数)+BY
40.0 =5.4×4+BY
BY =18.4
となりBYの数値異常が発見できます。では、BYが高いと何が問題なのでしょうか。
■ ベース の構成要素→利益のカギ、BY
BYのコントロールは店舗の利益に直結し、なるべく低い方が営業効率が良くなります。BYが「1」減ると粗利益が約2%増えるので、例えば台売りが30,000円だった場合には約600円の利益アップとなります。これが300台あれば合計約18万円のアップ、さらに30日では約540万円、年間(12ヶ月)ではなんと約6,480万円の利益アップに繋がるのです(「全台が」というのは現実的ではないとしても、仮に総台数の10%=30台を改善できれば648万円の利益増となります)。
さて、BYが1減ると実際の遊技にどのくらいの影響があるかを考えます。BYが1減るとベースが1%減るので、遊技客はアウト100個あたりに1個多く打ち出すことになります(1時間で60個多く打ち込む=240円多く使用する)。この程度の差ならば遊技客は気づきにくいものです。
BYを減らすためにはその構成要素を知る必要があります。BYの構成要素は、
・スタート入賞口以外での払い出し(他入賞)
・保留玉満タン時にスタート入賞口に入賞したときの払い出し(オーバーフロー)
の2つです。
「計数管理」という言葉を聞くと、「ややこしい」、「難しそう」、「計算は苦手」と敬遠する方も多いのですが、遊技機の状態を把握し適切に運用していくためには、計数管理の知識はとても重要です。この誌上セミナーを通してしっかりと理解を深めてほしいと思います。
【今回のポイント】
・BとB%で消費スピードが分かる
・Bの確認でデータ異常を発見できる
(了)