「マーケティングとは顧客のための行動すべてを指す」。
こうは言っても何から手を付ければいいのか、と感じるだろう。
前回確認したように現代はプロダクトアウト=お店の論理が通用する時代ではない。だからこそ、マーケティングの第一歩は顧客の欲求を探ることになる。
・顧客は何を求めているか
を考えるのである。
しかしここでよくある間違いが起こる。
実はここで考えるべきなのは「顧客の求めること、プラスの要因」ではなく、「顧客の“不”の解消、マイナス要因」なのである。顧客の求めていることを探すのではなく、顧客の不満を探すのである。
ここで、(株)ファンケル創業者である池森賢二氏の言葉を紹介しよう。
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「自分の仕事を稼業として捉え、“不”の解消を試みていく」
~前略~
私は「不」という言葉をよく用いますが、不安を安心に変える、不便を便利に変える、不快を快適に変える。そうした「不」の解消がどんな事業にでも通用するものだと思っています。生活の中で少しでも不安や不便や不快があるのであれば、自分なりにそれを解決するための策を見いだしてほしい。それが世界の常識を変え、新たなビジネスの原点になると思うからです。
~後略~
https://ps.nikkei.co.jp/myroad/keyperson/ikemori_kenji/
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これこそまさに「マーケティング」といえよう。
繰り返しになるがマーケティングとは顧客のためのすべての行動である。顧客が“不”を感じているならそれを取り除く、そうすれば顧客は喜び、自社へのロイヤリティも高まる。つまり世の中にある”不”を探すことはビジネスチャンスということだ。
ちなみにこのことを効率よく追求していくためにいろいろな戦略フレームワークがあるのである。SWOT、4P(7P)、PLC、LTV、その他いろいろな考え方はどれも「顧客の”不”の解消のため」と捉えれば理解も早い。
■ “不”の解消の4段階
“不”の解消には、以下の4つの段階で進めるとよい。
1.誰が、どこで、いつ、何に、なぜ、どのように困っているのかを考える
いわゆる5W1H(Who、Where、When、What、Why、How)である。
2.どのくらい深刻かを考える
・“不”を持つ人の数は多いか
・その“不”は頻繁に起こるか
・その“不”は顧客にとって深刻な問題か
できるだけ定量的に数字で考えるとよい。
3.なぜその”不“が発生するのかを考える
“不”の要因を分解して、その”不“が起こる理由を考える。「Why×3」で『Aの原因はB、Bになる原因はC、Cが発生するのがDだから』というように「なぜ?×3」で考える。そうすると原因ではなく「真因」に到達する。
4.なぜ、その“不”が解決されてこなかったのかを考える
理由が明らかなのになぜこれまで解消されなかったのか。何らかの背景があるかもしれない。その背景分析はPEST分析と呼ばれる分析方法が役に立つ。
Politics(政治的要因)
Economy(経済的要因)
Society(社会的要因)
Technology(技術的要因)
これら4つの面に解決できない背景がなかったかを考え、もしもこれらの背景に要因がないなら、それはチャンスにつながる。
■ 世のため人のため、めぐりめぐって自分のため
マーケティングは顧客のためにすべきこと全てである。
もちろん、マーケティングはその先の「企業の収益向上」という目的のための行動だが、その行動の視点はリターンの大きさではなく”不の大きさ“にしなくてはならない。
マーケティングとは顧客のための行動、そしてそれは“不”の解消。
松下幸之助翁はこう言った。
「世のため人のためになり、ひいては自分のためになるということをやったら、必ず成就します」と。
(了)