■ インフレターゲット
第2次安倍内閣成立直後の2013年1月、政府と日銀は消費者物価の上昇率2%を目指すという、いわゆる「 インフレターゲット 」を発表しました。これは「中央銀行がインフレ目標を明示しその達成を優先する金融政策」で、簡単に言えば「モノの値段を上げますよ!」ということです。
庶民からすれば「モノの値段を上げる?バカ言っちゃいけない、安い方がイイじゃないか!」と考えるかもしれません。しかし経済学の視点で言えば「モノの値段が上がるほうが、暮らしが良くなる」のです。
■ 消費者の行動
Q1.明日になったら110円になります。いつ買いますか?
Q2.明日になったら90円になります。いつ買いますか?
Q3.毎年1円ずつ値上がりします。いつ買いますか?
Q4.毎年1円ずつ値下がりします。いつ買いますか?
この答えとして一般的に考えるなら、
A1.今日、買う
A2.明日、買う
A3.安いうちに買えるだけ、買う
A4.最安値になるまで、待つ
となるでしょう。
このように「値段が上がるのが分かっている」ならすぐに行動し、「値段が下がるのがわかっている」場合は下がるまで待つ=買わないことになりますね。
■ モノが売れるとどうなるか
消費者が買えば(逆に言えばモノが売れれば)企業の収益が上がります。企業はその収益で設備投資をし、また社員に昇給という形で報います。すると社員=消費者の所得が増えるので購入量が増えるという好循環が形成されます。
一方、消費者が買わなければ(売れなければ)企業の収益が減り、それでも売るために値段を下げようとし、それがまた買い控えを促すことになり、結局消費者も緊縮を強いられる悪循環が形成されることになります。
日本はこの「失われた30年」にデフレーション(デフレ、モノの値段が下がること)となっていました。だから「生活が全然楽にならない」と感じることになっていたのです。
(実際には「戦後2番目に長い好景気」ではありましたが、それは消費支出ではない部分でGDPを押し上げていたからです。この点については別途また記事にしようと思います。)
■ インフレーションでの”お金の価値”
インフレーション下ではお金の価値が低下し、デフレーション下ではお金の価値が上昇します。
例1) インフレーション
ジュースが100円→120円となるということは、「ジュース」そのものは変わらずとも同じ量でより多くのお金が必要なのでお金そのものの価値が低下している。
例2) デフレーション
ジュースが100円→90円になるということは、「ジュース」そのものは変わらずとも同じ量がより少ない金額で手に入るので、お金そのものの価値が高まっている。
上記をもう少し大きな視点で考えれば、
・インフレーション下では(お金の価値が下がるので)金利負担が軽い
・デフレーション下では(お金の価値が上がるので)金利負担が重い
ことになるので、企業の設備投資意欲はインフレーション下の方が高くなることにつながり、GDP(国内総生産)押し上げ効果も高まります。
このようにインフレーションは国力増強の観点でも消費者の生活の観点でも良いことなのです。
なお「三面等価の原則」というものがあり、「国内総生産=国内総支出=国内総分配」なのでGDPが上昇するということは支出も所得(分配)も増えることを意味します。
■ 錬金術
仮に今4人の人がいるとします。(Aさん、Bさん、Cさん、Dさん)
そして各々が以下のような借金があるとしましょう。
・AさんはBさんに1万円借りている
・BさんはCさんに1万円借りている
・CさんはDさんに1万円借りている
つづいて、
① あるときAさんは1万円の収入があり、このお金でBさんからの借金を返済しました。
② そこでBさんもこの収入を基にCさんに1万円、返済します。
③ さらにCさんもDさんに返済します。
この①~③ですべての借金がなくなるのですが、実は「実際のお金」は最初の1万円しか登場していません。
しかし上記の計算で合計4万円が生まれたことになりました。これを経済学では「乗数効果(乗数理論)」と呼び、
・お金は循環することで新たな価値を生む
とされているのです。まさに現代の錬金術、です。
お金は使うことで増えていく。だからこそインフレーションを起こさなければならないのですね。
モノの値段が上がること、お金を使うことは生活を楽にする第一歩、です。
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