■ 競争環境ではなく協業環境
マーケティングの真価は事業パートナー(それは供給業者のみならずを取り巻くすべての事業者)の役割と能力に注目し、その力を十分に活かすことにある。自社を取り巻くすべての業者は「事業パートナー」と位置付けられ、彼らは自社のオペレーション能力を高めることに貢献するだけでなく、自社の価値創造力を高めてくれる存在なのである。
複雑に入り組んだ現代社会において自社単独で事業を進めることができると思っている人(企業)はいないだろう。それはどれほど大きな企業であっても同じであり、逆に大企業ほど事業パートナーを重視する。自社にはないリソース(資源)の獲得、活用はパートナーに委ねることでその価値が何倍にも広がることを理解しているからである。なお、ここでいう価値とはもちろん「消費者にとっての価値」である。(企業が得られる価値、ではない)
この「事業パートナーの活用」についてフィリップ・コトラー氏はその著書「新・マーケティング原論」において面白い予言(?)を記していた。以下に引用しよう。
『~前略~ 例えば遠くない将来、電力会社と家電メーカーが提携して“冷蔵庫サービス”を提供するようになるだろう。レンタル、融資、メンテナンス、電力供給などをパッケージ化して、毎月一括で料金を請求するのだ。~後略~』
この書籍の発刊は2002年である。もちろん2020年の現在に「冷蔵庫サービス」はないが、事業主体同士の連携による一括サービスはいたるところで見られる。当時は企業間の競争も激しく収益の増加を狙うためには少しでも「抜け駆け」を考えていた時代だ。その時代に将来の企業間連携を予見できているのは「マーケティング」を追求することで未来が見通せる好例だろう。
■ インターネット
インターネットの発展は顧客との関係性を変化させただけでなく、事業者同士の関係性も劇的に変化させた。上に「大企業ほど事業パートナーを重視する」と記載したが、これまでの事業者同士の関係性はどちらかと言えばコンペティション(競争)によって、より有利な条件を引き出すことが重要な管理点だった。
しかし現在は違う。現在は逆に事業者(サプライヤーを含む)を絞り込み、関係性を強化することで創造性の向上を図る動きが主流となっている。事業者を絞り込むことでこれまで多くの時間を割いていた「関係事業者の管理」が必要なくなり、より創造性に向ける時間が取れるようになっているのである。また周辺事業者としても関係性強化により競合を意識することなく創造に注力できる環境が得られることになり、結果的に顧客にとっての価値は現在の動きの方が高まることになる。
「マーケティングはそのすべてが顧客のため」である。事業パートナーとの価値創造を進めることが顧客価値を高め、それが自社の価値をより高めることになるのである。
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