2019年末現在のパチンコ店舗数は「8,886店舗」とされています。(全日遊連加盟店舗数。これにアウトサイダー(組合非加盟)がおおよそ500店舗弱とされているのでおおよそ9,400店舗弱と考えられます。)
一応最新の統計データ(全日遊連発表、2020年9月末)では8,378店舗とされていますが、細かい統計が出ていないので今回は2019年末の数字で話を進めます。
パチンコパチスロ情報島「9月末の全日遊連加盟パチンコ店舗数は前月比▲34店舗の8,378店舗」
さて冒頭にあげた数字(おおよそ9,400店舗)というのは皆さんもご存じだと思います。この数字から読み取れるパチンコマーケットはどのようなものだと思いますか?
■ 店舗数の減少と大型店舗化
・全国のホール数は娯楽が乏しかった戦後の復興とともに増加し昭和20年年代後半には4万5,000店を超すまでに急成長する。しかし、射幸性の高い連発式パチンコ機の禁止令が出たことでホール数も激減。昭和30年代のはじめには約8,800店にまで減少することとなる。
・その後は長い間に渡って10,000店のラインを推移していたが、昭和50年代の半ばのフィーバー機登場、いわゆる「フィーバーブーム」の到来で、以降、店舗数は年間400~500店舗ずつ増加していた。
・ところが平成7年頃に変造プリペイドカードの横行やパチンコへの“のめり込み”を起因とする複数の課題を社会から突きつけられたのを契機に、全国のホール数は減少に転じる。
・ただしホール数の減少は店舗自体の大型化も大きな要因の一つで、この間、全国の遊技機台数は大きな変化がないまま推移している。つまり、多店舗展開を図る企業による大型店舗が次々とオープンする一方で中小規模のホールが廃業するという、いわゆる二極分化の構図の中にある。
という記述があります。
たしかに近年のパチンコホールは大型化が進んでいます。
→1998年17,000店舗470万台、1店舗あたり平均276台
→2018年10,000店舗450万台、1店舗あたり平均450台
(㈳PTB調べ。)
■ 小規模零細企業が乱立する特異な業界
コンビニ業界の企業数とシェア(売上高)をご存じでしょうか。コンビニ業界の市場規模は7兆2,719億円とされ、そのほぼすべてを7社で占めています。
1位:セブン&アイホールディングス 2兆 6,747億円
2位:ローソン 2兆 495億円
3位:ファミリーマート 2兆 55億円
4位:ミニストップ 3,363億円
5位:スリーエフ 797億円
6位:ヤマサキデイリーストア 639億円
7位:ポプラ 623億円
そして主要3社、つまりセブン&アイホールディングス、ローソン、ファミリーマートで6兆8,197億円、実に93.78%のシェアを占めています。
【コンビニ業界研究ガイド】売上高ランキングや主要企業の詳細を紹介
驚くほどの寡占化に感じますが、これは別にコンビニ業界が特異なのではなくその他でも同じような傾向の業界は数多くあります。
・自動車メーカー業界
・ガソリンスタンド業界
・携帯電話キャリア業界
・百貨店業界
など、主要な企業だけで90%以上の市場シェアを獲得している業界は多いです。
さて翻ってパチンコホール業界を見てみましょう。
パチンコ業界も大手のネームバリューは突出しており、コンビニや自動車メーカー業界ほどではないにしろ「少数の大手が寡占化」というイメージがあるかもしれません。
実はパチンコ業界の「企業数」は2,798社あるとされています。1社平均3.3店舗強ということになりますね。
矢野経済研究所「2019年12月末のパチンコホール経営企業数は205社減の2,798企業、店舗数は9,386店舗~経営企業数はついに3,000社を割り込む~」
このうち10店舗以上を持つ企業は191社で店舗数は4,462店。
ジェネピ「【2020年版】パチンコ店舗数ランキングまとめ」
この「上位企業」は平均で約23店舗を所有していることになり、残った約2,600社が4,924店舗を持つのでこの2,600社の平均店舗数は約1.9店舗となります。
「ものすごく小さな企業が、ものすごく多く展開している」という稀有な業界なのです。
■ 平均値と中央値
以上、パチンコホール業界の店舗数(と企業数)について業界の状況を確認しました。
パチンコホールの店舗数を平均で考えると
・1社平均3.3店舗を持つ
となりますが、圧倒的多数である2,600社(9店舗所有以下)の平均は1.9店舗だということを上段にて記載しています。
こうなると中央値、つまり「1位から最下位までをすべて順序通り並べた真ん中」である4,700番目の店舗数は、1店舗強くらいの所有にしかならないことが分かります。圧倒的多数のお店は「零細」なのです。
またこれを設置台数で見ても面白い数字があります。
「警察庁:「令和元年(2019年)における風俗環境の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について」
によれば500台以下の店舗数は6,728店舗(69.8%)となっており、約7割が平均(450台)近辺以下の設置台数しかないことが分かります。
※450台以下、という区分がないため概算です。
設置台数についても平均と中央値には乖離があります。
そしてこれは遊技機の統計データでも同じ傾向が考えられます。
・アウト
・スタート
・ベース
・利益率、玉粗利、台粗利
などなど。
発表される平均データは指標ではあれども参考にはなりにくいのです。
■ 平均を見ての話はナンセンス
業界の中央からの提言などはおおむねこういった統計データを基に分析し、発信されます。
しかし日々現場で頭を悩ませる人は、圧倒的多数が「平均以下とされる」状況にあります。ここに、業界誌や声の大きな方(重鎮とされる方)の意見に違和感を持つ要因があると思います。
ここでいう「平均以下」が圧倒的多数という事実。本当に必要な情報、思考、提言は「“平均以下”がどうすべきか」だと思います。
私自身もパチンコ店舗管理者時代はいわゆるこの区分での中小零細に該当する企業に勤めており、またコンサルタントとなってからも主要な顧客は小さなお店でした。
そういった環境に身を置きながら日々考えていたことは、
・業界誌やコラムなどで語られる話の大多数が、現実と乖離しているような気がする
でした。こうすべき論、こうあるべき論、アウト数、各種遊技機数値、目指す方向性。とても自社および周辺がそれをするのは現実的ではない、と感じること多数だったのです。
業界誌などで発信できる人数は限られています。過去にはそういった意見や提言を「受け取る」しかできなかったので、思うところがあってもそれは自分の中およびリアルで接する人たちとの間での共有にしかなりませんでした。
しかしオンライン化が発展し、情報、ソース共に「業界誌等の発信」以外からも取得可能です。これにより違和感を覚えた発信に対する別のエビデンスを見つけることも可能であり、且つそれを発信することもできます。
現場のことは現場が一番わかっている。
「”業界大御所の提言”が現場の感覚とズレている理由」は、圧倒的多数の声が届いていない(見えていない、聞こえていない)ことにあると思います。
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