この文章は月刊アミューズメントジャパン誌にて連載されている「基礎から再確認、計数管理」の第12回、2020年5月号に掲載されたものです。
改めてウェブ上にアップすることで連載内容のおさらいになるかな、と思いますので、今後も定期的にアミューズメントジャパン誌の連載をアップしてまいります。
=======================
皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。
計数管理に対して苦手意識を持つ方も多いと思います。この連載ではそういった苦手意識を克服していただくために、分かり易くお伝えしています。
前回は「BYの重要性」というお話でした。「BY数値を疎かにすると莫大な利益の損失がある」というものです。今回は計数管理項目を遊技機の管理にどのように役立てるのかを考えてみましょう。
■ 遊技機の出玉を配分する
割数、出玉の構成要素には店舗でコントロール可能な項目とできない項目があり、前者はS、BY、BA、T1Y、後者はTSや平均継続回数などがあります(※1)。
割数や出玉の配分は、コントロールできる数値=S、BY、BA、T1Yを調節して決定するのです。一般的に割数を低くしたいときにはSを下げますが、このときにSを下げるにしても遊技客に不満を感じさせないようにするには下限があります。
遊技機のスペック(確率や平均出玉等)により「甘くて回せない」ということがありますが、上記のようにS以外にもBYやBA、T1Yもコントロールが可能です。
ここで、Sをできる限り下げないようにしてその他の数値を少しずつ減らせば、スペックの甘い機種でも割数を下げながらSを維持する営業ができることになります。
また、これとは逆に「辛すぎて回しても出ない」というようなときにも、S以外の部分=BAやT1Yを増やすことで対処が可能です。遊技機の出玉配分、出玉管理とは、このように4つのコントロールできる項目を変化させることなのです。
※1 ハネモノタイプの機種は役モノの拾球率を変化させられるので、特賞確率(TS)を変化させることが可能。
■ コントロール可能項目の変化による、粗利益の変化
これまで述べたように、店舗側でコントロールができるのはS、BY、BA、T1Yの4項目のみです(変更可能項目)。では、これらの変化が全体にどのくらいの影響を及ぼすかを、数値で確認してみます。
前回はBYが1.0変化するときの粗利益の変化を確認しました。
稼働が10,000発ある場合、図①のようにBYが1.0増加すると粗利益が約283円ずつのロスとなり、この機種が20台設置されているとすると、一日あたり5,660円の粗利益ロス、1ヶ月で169,800円、年間(12ヶ月)では約200万円の粗利益ロスとなりました。
同様に図②ではBAが5.0%変化した場合とT1Yが20個ずつ変化した場合を見ています。
BAが5.0%変化すると台あたり一日で約340円の粗利益が変化するので、一日あたり6,800円、1ヶ月で約20万円、1年で約245万円の粗利益ロスです。
またT1Yが20個ずつ変化すると、台あたり一日約270円の粗利益が変化します(年間では20.台で約194万円の粗利益増)。
■ 細かい数値管理
遊技機の出玉配分を管理できるのはこの4項目だけであり、これらの細かい数値が営業全体に多大な影響があることは上記の通りです。ただ、実際の営業において「全台が~」という状況は現実的ではありません。
しかし、個別台ではこれらの数値について店舗で(またはメンテナンス担当者で)設定した基準値を上回っている台もあるでしょう。
一般的にSについては機種平均データとともに個別台のバラつきを修正します。台ごとの個体差を極力減らし、台ごとの出方を揃えるためです。
ところがBYやBA、T1Yについては機種平均データしか確認しない方が多く見られます。
上記の通りS以外にもコントロールできる項目があるので、これらの項目(BY、BA、T1Y)についても台ごとのバラつきを減らしていく作業が必要なのです。
割数が予定よりも出てしまった、というのは結果です。この結果にはコントロール不可能な項目の要素(TS、平均継続回数、客滞率など)も絡みますが、コントロール可能な項目(S、BY、BA、T1Y)が基準値を上回っているならば、そのような台は出るべくして出る台であり無駄な出玉、粗利ロスとなっています。
このように基準値を上回った台を見過ごすことは、メンテナンス担当者の怠慢にあたると考えられます。日々のデータを細かくチェックし、基準値を超えた台を一つ一つ適正値に直していくことが担当者には求められます。
【今回のポイント】
・S以外の項目も台ごとに管理する
・どのくらい変化するかを計算で把握しておく