収穫逓増
■ 売上を上げなければいけない理由
収穫逓増 (しゅうかく・ていぞう)、という言葉を聞いたことがあるでしょうか。一般には「収穫逓増の法則」と言われ、
・固定費と変動費のかかる業種において、生産(販売)個数が増えれば増えるほど単位当たりの費用が下がる(儲かる)
という法則です。
例えば、
・固定費として事業所維持に500万かかる
・変動費として1個あたりの原材料費が500円かかる
・販売価格は1,000円で、1個につき500円の利益
という製品があったとします。
固定費は売上が0円でもかかる費用なので、10,000個生産で損益分岐点(利益500円×10,000個=500万円の売上で費用がちょうど回収できる)、以降1個ごとに+500円の利潤となっていきます。
このとき(損益分岐点)の1個当たりの費用を計算してみます。
費用:固定費500万、変動費500万(500円×1万個)
∴費用1,000万円÷生産1万個=1個当たりの費用は1,000円
これを生産個数ごとに計算してみると、
・生産数20,000個
費用:固定費500万、変動費1,000万(500円×2万個)
∴費用1,500万円÷生産2万個=1個当たりの費用は750円
・生産数30,000個
費用:固定費500万、変動費1,500万(500円×3万個)
∴費用2,000万円÷生産3万個=1個当たりの費用は667円
・生産数40,000個
費用:固定費500万、変動費2,000万(500円×4万個)
∴費用2,500万円÷生産4万個=1個当たりの費用は625円
というように、生産数が多くなればなるほど費用が下がっていく=利益が増えることが分かります。
この考え方は一般的な製造業、小売業では常識とされる計算で、だからこそ「生産数(販売数)を増やせ!」という戦略、戦術を模索することになります。
さて、この考え方をパチンコ店で生かすことはできないでしょうか。
■ パチンコ店で 収穫逓増 モデルを構築する
パチンコ店での応用はズバリ、「玉粗利管理」を徹底することです。
しかし皆さん、勘違いをしないでほしい点があります。それは、
・玉粗利管理は玉粗利をいくつにするかの管理方法ではなく、「アウトをいくつにするのか」の管理方法である
という点です。
「玉粗利を〇円に設定するから、△△△△の利益になる」ではなく、「玉粗利を〇円に設定するから、必要な粗利にはアウトを◇◇◇◇発にする。そのためになにをしようか」と考える管理方法です。
※玉粗利管理についてはこちらで詳しく解説しています。
「玉粗利管理は“アウトの管理”である」 https://www.ab-c.jpn.com/3122
■ 収穫逓増 の志向および思考はアウト重視
アウト志向の営業をするとどういったことが考えられるかを見てみましょう。
① 稼働が伸びれば、必ず売上は増える
② 売上が伸びれば、必ず出玉量は増える
③ 出玉量が増えれば、必ずリピートが増える
④ リピートが増えれば、必ず稼働が増える
⑤ ①に戻る(ループする)
このとき「玉粗利は基本的に変えない」としっかりと認識してください。「出す」のではなく(利幅は変えず)、「販売個数=アウトを上げる」と考えるのです。
もちろん戦術の一つとして一時的に玉粗利を下げる選択があるかもしれませんが、基本的にはそのことは考えずに「お店の魅力に頼る」=店舗力の向上を図ることに主眼を置くべきです。
(詳しくはこちら「玉粗利管理はアウトの管理である」 https://www.ab-c.jpn.com/3122 )
「収穫逓増の法則」では、とにかく生産(販売)数=アウト数だけを考えて下さい。そのために必要なことは「稼働第一主義の徹底」です。収益は必ず後からついてきます。
■ すべては徹底した顧客視点
「アウトを伸ばす」、この時の表現の「主語」は何でしょうか。もちろん「お店が」です。この認識を以下のように変えてください。
「長く遊ぶ」
こうなると主語は「お客様が」に変化することになります。
努力自体はお店がするものですが、その行動はお客様に委ねられていることを認識しなくてはいけないです。「販売」ではなく「購買」に意識を向けるのです。
(参考:「ハンソク(販促)ではなくコウソク(購促)」 https://www.ab-c.jpn.com/646 )
議論はすべてにおいて顧客視点で行います。
それはお客様のためになることか?
それはお客様が欲していることか?
それはお客様の潜在ニーズを掘り起こすことか?
ここにお店の論理は一切挟みません。お店の都合は後回し、もちろん収益のことは考えません。(収益はあとから必ずついてくるから、です)
■ 収穫は必ず逓増する
収穫=利益は、アウトが伸びれば必ず逓増します。いま利益の確保に苦しんでいるお店は、そのすべてが同時に「稼働の低迷」に苦しんでいるはずで、そんな状況で稼働を伸ばすことなど無理だ、という固定観念に縛られていませんか?もしもそうならば、
・稼働を伸ばすには利益の減少を伴う
・利益を伸ばすには稼働の低下を伴う
という二元論から抜け出せていないのではないでしょうか。
稼働と利益は相反しません。「orではなくand」なのです。
利益は会社経営で必ず必要で、だからこそ売上≒稼働が必要という関係です。
収穫は必ず逓増します。もちろんそれは生産(販売)=アウトを伸ばせば、です。
利益の前に絶対にアウトを見てください。利益は必ず付いてきます。
(了)