この文章は月刊 アミューズメントジャパン 誌にて連載されている「基礎から再確認、計数管理」の第14回、2020年7月号に掲載されたものです。
改めてウェブ上にアップすることで連載内容のおさらいになるかな、と思いますので、今後も定期的にアミューズメントジャパン誌の連載をアップしてまいります。
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皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。
計数管理に対して苦手意識を持つ方も多いと思います。この連載ではそういった苦手意識を克服していただくために、分かり易くお伝えしています。
前回は体感スタートとホールコンピュータ(HC)で確認するスタートの違いを見ました。
・HCスタートではお客様の体感する回転数の把握ができないときがある
・回る時間よりも、回らない時間の方が体感的には重要
で、まずは回りムラのないメンテナンスを志向することが稼働を上げて利益を確保することに繋がるというお話です。
今回は、
・なぜ、出てはいけないときに出てしまうのか
についてお伝えします。
■ 出方は計数項目できまる
遊技機の出方はメンテナンスからの計数数値で決まります。必要な計数項目は、
・スタート(S)
・ベース(B)
・大当たりでの獲得玉(TY)
・大当たりまでの回転数(TS)
・客滞率
で、この5つの数値を基に計算するのが「割数=借りた玉の何倍の玉を出せるか」です。第10回(基本的なシミュレーションの構造)で学んだ計算で数値を確認してみましょう。
例①) CRスーパー海物語IN沖縄4(TS319.6)
・スタート 5.30回/分
・ベース 30.0%
・TY 4,300個
・客滞率 130%
上記の条件で機械割数を計算します。
機械割数の計算は下図①をご覧ください。
計算結果は10.24割、11.2割分岐の場合は8.5%の利益率です。また玉単価が1.57円になるので玉粗利は0.13円、稼働が10,000発だとすれば台粗利は1,345円と計算できます。(図②)
■ 割数はメンテナンス以外も影響する
ここで例えば、
・CR沖海4は毎日同じでいく
という営業方針だったとしましょう。
その時に「同じなのだから、同じメンテナンスで営業する」としてそのまま週末に突入したとします。
ただ週末は稼働が高くなり、また持ち玉で遊技するお客様も増える傾向があるのでこのことを条件に加えて計算してみます。
例②)①同様のメンテナンスで客滞率を180%、稼働を15,000発とする
この②の条件で計算すると割数は10.34割、28個交換の場合は7.7%の利益率となります。玉単価と玉粗利もそれぞれ1.15円、0.09円になるので、稼働が週末で15,000発まで伸びるとしても台粗利は1,334円と下がってしまいました。(図③)
■ 「何を同じ」と志向するかで変わる
特に海物語系の機種は年配の常連客向けに「毎日、同じ」を志向するお店が多いと思います。
しかしこの「同じ」にもいろいろな捉え方があるもので、一例を挙げると、
① 毎日同じ、メンテナンス(スタート、ベース)
② 毎日同じ、割数(利益率)
③ 毎日同じ、玉粗利
④ 毎日同じ、台粗利
等の捉え方があり、それぞれ得られる結果が違います。これら4つの手法で平日→週末の変化がどのようになるかというと、
① 同じメンテナンスの場合 → 利益率が下がる(台粗利は稼働による)
② 同じ割数の場合 → メンテナンスが下がる(下げないといけない)
③ 同じ玉粗利の場合 → メンテナンスが下がる(下げないといけない)
④ 同じ台粗利の場合 → メンテナンスが下がる(下げないといけない)
となります。
■ お店にとって最も重要なこと
お店にとって(会社にとって)重要なことは言うまでもなく「利益」です。「同じ営業を志向しているから」と言って同じメンテナンスで毎日営業すると、稼働が見込める週末ほど利益率が下がり本来確保すべき必要な利益を失うことがあります。
そしてその原因はメンテナンスや確率のせいではなく、「客滞率=お客様の持ち玉遊技時間比率」のせいです。
今一度「割数=借りた玉の何倍の玉を出せるか」という計算に必要な計数項目を確認するとその中には
・客滞率
があります。
割数は5つの数字を使って計算しますが基本的には「どこかの数字が上がれば、結果の数字も上がる」ことになるので、当然客滞率が上がれば割数も上がってしまうのです。
※出玉率が100%を下回っている場合はこの限りではありません。
①毎日同じ「回転数」を志向するなら、稼働の見込めるときは利益額を下げた計画が必要です。
②毎日同じ「利益額」を志向するなら、稼働が見込めるときはメンテナンスを下げる必要があります。
③週末は「利益を確保する」営業を志向するなら、週末は客滞率を考慮したメンテナンス、具体的には自身で考えている数値よりもさらに低めにする必要があります。
「週末になると噴く」、この原因は客滞率を考慮しない営業計画、メンテナンス計画にあるのです。
【今回のポイント】
・客滞率で出方は変わる
・「同じ」とは何を同じにするのかを明確に
(了)