先日、一般社団法人 日本流通商健全化協会が、 インボイス制度 導入について関係省庁に要望書提出とヒアリングを行ったとのことです。
さてここで2つの聞きなれないワードが出てきたことでしょう。
1.一般社団法人 日本流通商健全化協会とは
(公式ホームページより)
https://www.nrk-kyokai.or.jp/publics/index/37/
パチンコ店の賞品買取において「賞品買取所から賞品を仕入れて、パチンコ店に卸す商社の団体」で、比較的新しい設立(2017年設立→もうすぐ満4年)の団体です。買取所の団体ではなく卸の団体なのでお客様的にはほぼ馴染みはないでしょうし、パチンコ店的にも納品で会うくらいで頻繁に接することはない業者さんだと思います。
2.インボイス制度 とは
(インボイス制度とは?2種類の消費税率へ対応するポイントをわかりやすく解説)
https://www.smbc-card.com/cashless/kamei/invoice_system.jsp
従来は消費税率が1つ(8%)だったので請求書=「いくらで購入したかがわかる書類」さえあれば大丈夫でした。(請求書保存方式。) しかし税率が2つになったため仕入れたものの名称や価格だけでなく、それぞれの仕入れ商品ごとの適用税率と税額を明記した「適格請求書=インボイス」の保存が求められます。
この制度は2023年10月1日から開始されます。それまでに適格請求書発行事業者になっていなければ、それ以降は消費税の仕入れ控除が受けられなくなってしまうのです。
パチンコ店に卸す賞品(賞品商社的に言えば「商品」でしょう)、誤解を恐れずに言えばいわゆる「特殊景品」ですが、この取扱高は莫大な金額です。この仕入れ、つまり賞品買取所から買い取った特殊景品の仕入れに支払い消費税が認められなければ、特殊景品商社の経営に大きな影響があることは想像に難くないところです。
■ インボイス制度 に対する面談、ヒアリングの内容
面談先の関係省庁は以下の通り。
・国税庁:課税部消費税室(兼)消費税軽減税率制度対応室
・警察庁:生活安全局生活安全企画課犯罪防止対策室
またヒアリング内容は以下の通り。
・三店方式の概要について
・現行の会計処理についての説明
・インボイス制度に対する懸念事項とお願い
・仕入税額控除を受ける方策について
2023年10月1日以降に仕入税額控除を受けるためには適格請求書発行事業所の認定が必要です。そこでどういった対応が求められるのか、その懸念点はないのか、などを確認したようです。
1.賞品買取所の問題
特殊景品納入業者が仕入れ額控除を認めてもらうためには買取所からの仕入れに対して適格請求書の発行を受ける必要があります。ということは、買取所自体も適格請求書発行事業者としての登録が必須となるので、この確認及び登録を促すことが必要となります。
ただしこれ自体は登録を済ませればOKなのでそれほど問題ではないと思います。
2.インボイス制度 での買取所の対応の問題
買取所が適格請求書発行事業者として登録されていても、
・買取所が仕入れる(買い取る)賞品(特殊景品)は一般遊技客から
なので、その各々から一人ひとり適格請求書をいただくことが現実的に不可能と考えられます。
この件に対しての関係省庁の見解は次の通りです。
● 国税庁の見解
(1) インボイス制度 において仕入税額控除の適用を受けるために保存する帳簿には、
ⓐ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ⓑ 〃 を行った年月日
Ⓒ 〃 に係る資産または役務の名称
ⓓ 〃 に係る支払対価の額(税込)
ⓔ 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入に該当する旨
が記載されていることが必要。
(2) その中で買取所は「古物商」の免許を取得済みであること。
(3) それを前提として特殊景品について、「消費税法上の『個物に準ずるもの』として考えている
(4) よって、古物商として古物営業法に則り、それを買い取ったならば古物商特例の対象と考えている(※)
(5) そして古物商特例の適用を受ける場合、前述のⓐ(課税仕入れの相手の氏名及び名称)の記載を省略することが可能となる。
(6) またⓑ(課税仕入れを行った年月日)及びⒸ(課税仕入れにかかる資産または役務の内容)について、「1日分」や「1か月分」といった一定期間をまとめて記載することも可能となる。
以上の見解により、基本的には古物台帳を買い取り所に設置する義務が発生するものだが、上記⑤と⑥により独自の台帳を作成してもよいことになる。
※古物商が買取りの相手方が適格請求書発行事業者でないことなど必要な要件を客観的に明らかにしておけば、「適格請求書」等の保存が免除されること。
● 警察庁の見解
(1) 特殊景品については盗品の売買が行われることはないとの認識から、インボイス制度が導入されても古物商免許の必要性はないとの見解に変わりはない。
(2) 今回、インボイス制度の関係で買取所の事業者が古物商免許申請を行う場合には、あくまでも古物営業法の規制13品目に該当する品目を扱うことが前提となり、もしも特殊景品のみの取り扱いでの免許申請であればそれは免許取得対象外となる。
(3) 古物商免許取得する場合、その業法を順守するように。
(4) 古物営業法には、免許取得後6か月以上取引の実態がない場合は取り消し処分が下されることになっている。しかし、「いつでも免許取得の品目が買取可能な状態」であれば取り消し対象にはならない。ただし立ち入り調査の対象とはなるのでそこを承知おきするように。
(5) 申請については主たる事業所を管轄する警察署の担当部署に提出を。
(6) 場合によっては一部個所の賃貸借契約を求める場合がある。
3.協会として対応方針案
今後の理事会において提案となるが、次の通りで進めることになる。
(1) 納品商社、買取所ともに適格請求書発行事業者としての申請を行う。
(2) 買取所においては全箇所の古物商免許を取得し、それに付随する台帳等を配備し、古物商特例の対象となり得るように準備する。
■ インボイス制度 の問題についての私見
消費税というのは購入した側が支払う税金ですが、納めるのは販売した事業者です。つまり負担者と納付者が別々というある意味特殊な税金であり、その納付の際に事業者は仕入れにかかった税金を差し引くことができます。
例)1,000円で仕入れて1,500円で販売
仕入時は1,100円支払い、1,650円で販売となるので納めるべき税額は差し引き50円となる。
→粗利益500円に対する税、50円
もしも仕入れの税控除が認められない場合、この事業者は150円の税金を納めることになってしまいます。
パチンコ店への特殊景品の販売額は莫大です。
仕入れ控除が認められなければ死活問題となることは想像に難くないところでしょう。
パチンコ店の営業と直接の関係はない事案かもしれませんが、「パチンコを取り巻く周辺業界(業種)で起こっている事案」として動きを把握しておくことが望ましいと思います。
(了)