レジャー白書 2021より
2021年9月29日、公益財団法人日本生産性本部よりレジャー白書2021が発表されました。「レジャー白書」とは1977年創刊の、日本の余暇の実態を需給双方の視点から総合的、時系列的に分析と記録をしている唯一の媒体です。
もちろんパチンコは「レジャー」、この調査対象に含まれています。
早速概略をなぞってみましょう。
■ レジャー白書 余暇関連市場規模は55兆2,040億円で、前年比23.7%減
レジャー白書2021によれば、2020年の余暇関連市場は55兆円で前年比▲23.7%の大幅な下落となりました。コロナ禍で巣ごもり需要が喚起されて在宅でのレジャー参加人口が上位に躍進した半面、旅行や外食、外出娯楽は非常に厳しい結果となっています。
「巣ごもり需要」は動画鑑賞や読書をはじめとする在宅レジャーのことを指します。当然そうなるとこれまで中心的な余暇活動であった観光や外食などが大きく減少してしまいます。
以下、レジャー白書2021のプレスリリースを引用します。
<『レジャー白書2021』の主なポイント>
「日本人の余暇活動の現状」
~一人当たり平均参加種目数は減少、旅行・外食から在宅レジャーが中心に
● 余暇活動の参加人口は、「動画鑑賞(レンタル、配信を含む)」(3,900 万人)が初の首位となったほか、「読書(仕事、勉強などを除く娯楽としての)」「音楽鑑賞(配信、CD、レコード、テープ、FM など)」など在宅レジャーが上位となった。前年首位の「国内観光旅行(避暑、避寒、温泉など)」は4位、2位だった「外食(日常的なものは除く)」は6 位と順位を下げた。
● 一人当たり平均参加種目数は、前年比2.4 種目減の9.9 種目。観光・行楽をはじめ全部門で減少。年代別にみても全年代で減少、特に70 代は男女ともに大きく減少した。
● Go To キャンペーンの利用率について、トラベルは29.9%、Eat は27.0%。ともに利用者の3/4 程度の行動に影響を与えた。
「暇関連産業・市場の動向」
~飲食や観光に打撃、配信や公営競技は増加
2020年の余暇関連市場規模は55兆2,040億円で、前年比マイナス23.7%と大幅に減少した。コロナ禍の影響を大きく受けた観光・行楽部門をはじめ、4部門すべてでマイナスであった。
【スポーツ部門】 前年比15.9%減
用品、施設、スポーツ観戦がマイナス、自転車とゴルフ練習場はプラス。
【趣味・創作部門】 前年比9.5%減
動画配信、音楽配信、電子出版は大幅な伸び、外出を伴う鑑賞レジャーは激減。
【娯楽部門】 前年比21.8%減
公営競技、ゲームは好調。カラオケ、飲食、ゲームセンター、パチンコは不調。
【観光・行楽部門】 前年比43.7%減
海外旅行9割減。旅行業、航空、バス、遊園地・レジャーランドも打撃が大きい。
■ レジャー白書 娯楽部門「パチンコ」は参加人口710万人、市場規模14.6兆円
さて私たちにとって重要なパチンコ業界のデータです。
・参加人口は前年比180万人減の710万人(▲20.2%)
・市場規模は前年比5.4兆円減の14.6兆円(▲27.0%)
恐ろしいほどのファン人口、市場規模の縮小です。
2020年は「トリプルパンチ」に見舞われたことでこのような、業界が崩壊するような縮小となったと考えられます。
※トリプルパンチ:店内禁煙、コロナ禍、6号機問題
どの要素がどれだけの縮小をけん引したのかは諸説ありますが、現場の肌感覚としては「どれもじゃ!」というところでしょう。
■ 参加人口について
まず参加人口(ファン人口)についてです。
レジャー白書におけるパチンコ参加人口の推移を確認すると、1990年代の後半にそれまでの「ファン3,000万人時代」から数年で2,000万人のラインを割り込みました。
その後しばらくは2,000万人ライン近辺で推移しましたが、2009年に1,720万人となってからは4年連続で減少した結果、2013年にはついに1,000万人を割り込む970万人まで下落しています。
翌2014年は180万人増の1,150万人に回復したものの2015年から再び減少傾向に転じ、以降、1,000万人のラインを下回ったままの低い水準での推移が続いていました。
そして今回、710万人という衝撃の数字です。
公的な発表であるレジャー白書以外にも民間、それもパチンコ業界での類似データの発表はされておりこの後随時発表されるでしょうが、概ね同じ傾向の数字だと思います。
■ 市場規模について
市場規模(貸玉と貸メダル料金の総額)は14.6兆円で、前の年との比較で27.0%、額にして5.4兆円の大幅減です。「27%減」、つまり市場は前年の73%でしかないということなのです。
この市場規模の下落は8年連続なので、下落という発表自体は業界人にとってある意味「慣れ」もあるかもしれません。
しかし前年の7割強の規模しかないこと、「30兆円時代」のピーク時と比べて半分以下になったことは衝撃です。
ザックリと、今の自分のお店の売上が73%になったと考えてください。
支払う経費は変わらない(機械代等、多少のコントロールはできますが。)のに「入り」の売上が73%しかないんですよ?
たとえば、
売上 10,000万円(1日あたり@330万円)
利益率 20%
粗利益 2,000万円
経費 1,800万円
営業損益 200万円
というお店があった場合、
売上 7,300万円(1日あたり@240万円)
利益率 20%
粗利益 1,460万円
経費 1,800万円
営業損益 ▲340万円
となってしまっている状況なんです。
利益率を25%にしてやっと粗利1,825万で営業損益+25万です。
※現実的には経常利益を計算したのちに「一時金、給付金」という、「特別利益」が入って税引き前当期純利益は出せるかもしれません。
キャッシュフロー計算では今回政府系金融機関からの借り入れが認められたので営業キャッシュフローが赤字ではあっても財務キャッシュフローはプラスとなり、「キャッシュ自体はある」という場合が多くあります。
それでも減っていくんですけどね。
今回コロナ禍での貸し出しは実質の利子率が0%、「据え置き」(返済時期を遅らせること)が3年間程度認められているので今はイイです。
でも借りたお金は必ず返す時が来るのですから最悪その時までに借りた額と同額は手元にないといけないのですが、このような市場規模(売上)の激減では、その見込みが非常に厳しいと言わざるを得ません。
■ 今後を考える
一般的に「結果、事象」の要因が外部にある場合は、その要因が取り除かれれば元に戻ります。(良いことも、悪いことも)
例) 秋という季節要因、お盆や年末という休日期間、好景気/不景気など
さて今回のトリプルパンチのうち外部要因はと言えば「コロナ禍」でしょう。(禁煙化も外部要因ですが、これは取り除かれることが実質期待できないので省きます。)
では、このコロナ禍が収まったら?市場規模は元に戻ると思いますか?
おそらくほぼすべての人が「NO!」というでしょう(思うでしょう)。
今回の市場規模およびファン人口の激減、これはパチンコ業界の構造的な問題だと考えられます。
ズバリ、コロナ禍はキッカケでしかない、ということです。
もちろん6号機問題も見方によっては外部要因、とすることも可能です。
しかしこちらも(禁煙化同様に)元に戻ることに期待はできません。
コロナ禍、禁煙、機種の性能低下というトリプルパンチでも業績を維持または落ち込みを最小限にしている店舗、会社もあるという事実をよーく考えてください。
厳しい外部環境での戦略の王道は、「強みを活かして、脅威の回避」です。
(平時の戦略の基本は「機会を逃さずに、強みを伸ばす」です。)
アナタのお店の強みは何ですか?
これまで機械に頼って、入替に頼って、イベントに頼ってきたことが「自店の強み」を霞ませてきたのではないでしょうか?
そもそも「強みの育成」を怠ってきたツケがいま、来たのではないでしょうか?
入替規模や機種、イベントは強みではない、強みではなかったということをしっかりと認識すべきです。
ヒト、モノ、カネ、情報、時間という5大経営資源。
モノとカネにばかり頼ってきた結果がいまではありませんか?
コロナ禍はもはや関係ない、「“パチンコ店としての価値”の提供」を今一度捉え直す、認識を改めることが今、求められています。
■ 利益と稼働を両立する考え方
-稼働を上げるには、出さなければいけない
-利益を上げるには、シメなけれないけない
この思考は間違っています。
アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社では一貫して「利益を増やせば、稼働は伸びる」とお伝えしています。
なぜそう言えるのか?
その答えはこちらをご覧ください。
⇒ https://www.ab-c.jpn.com/8655