アウトの中身
この文章は月刊アミューズメントジャパン誌にて連載されている「基礎から再確認 パチンコ計数管理 」の第27回、2021年8月号に掲載されたものです。
改めてウェブ上にアップすることで連載内容のおさらいになるかな、と思いますので、今後も定期的にアミューズメントジャパン誌の連載をアップしてまいります。
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皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。「計数管理」というとホールコンピュータの数字を分析し遊技機のメンテナンスに生かすことだと思われている方も多いと思います。もちろんそれが主目的ではありますが、それ以外でも様々な場面で計数管理の知識が活用できます。
今回はアウト数値の読み取り方についてお伝えいたします。
■ 営業におけるもっとも重要な数値、それはアウト
アウト、別の呼び方では稼働ともいわれ、パチンコ計数管理において最も重要で、店舗はこの数値を伸ばすために遊技機メンテナンスやその他様々な営業施策を行います。
アウトとはお客様が打ち込んだ玉の数を表し、現在のパチンコ遊技機は1分間におおよそ100個の玉を発射できるのでそのままこの数値がお客様の遊技時間を表します。
つまりこの数値が高ければいわゆる人気店、人気機種となるのです。
さらにアウトは目に見える客数としての効果だけでなくパチンコ計数管理においても高い方が有利になります。
遊技機メンテナンスはシミュレーションを基に行うので確率統計的にもアウト数値が高ければ試行回数が増えるので誤差が少なくなり、より「志向する営業」に近づけることができるからです。
※参考 「意図しない出方を避ける手法①」(月刊AJ連載16、本誌掲載は2020年9月号)
さてこの重要管理点となるアウト、もちろんこの数値が高い方がよいのは上記の通りなのですが単に高いだけではダメなのです。
その「中身」をしっかりと把握して遊技機ごとの特性を理解しないと思わぬ落とし穴にはまってしまいます。
■ アウトの中身 に注意!アウトには2つの状態がある
アウト(稼働)は遊技客の打ち込み玉数を示す数値なので当然、一日トータルの数を示しています。
ここで改めて「遊技客の打ち込むときの状態」を考えた場合、もちろんその状態は通常時と大当たり中の2種類があり、さらに大当たり中は確変中と純粋な大当たり中に分けられるはずです。(下図①参照)
この図①で示している中の通常時は遊技客にとっては限りなく苦痛の時間となります。
そして至極当然のことですが「大当たり中=至福の時間」に離席することはあり得ず、つまり遊技機の魅力を高めるということは「いかにこの苦痛の時間の離席を防ぐことができるか?」にかかってきます。(ここがメーカー開発者の腕の見せ所となり、演出のデキやその出現バランスなどで遊技客の期待感を維持させることを目指します。)
この苦痛の時間を短くできればいいのですが、しかしそこには大当たり確率というものがあるのでこの時間を短くすることはできません。確率統計の考え方で「必ず確率の分母で当たる」とするからです。
ということは遊技客の満足度を上げようとするならば、逆に「大当たりという時間をより長く体感してもらえればよいのではないか」という考えに行きつき、そして実際に過去にはその目論見がズバッと当たっています。
大当たり消化時間を長く体感させるスペックとしてのロングSTや小当たりラッシュタイプの遊技機です。
しかしロングSTや小当たりラッシュのスペックは大当たり消化時間が長くなるので必然的にアウト数値は伸びる傾向になるわけで(特に導入初期にはこの傾向が高くなる)、その数値をそのまま鵜呑みにして「この機種はよい」という判断をするのは早計と言えるでしょう。
■ 大当たり消化時間が短い機種は大当たり回数が多くなる
大当たり消化時間が長ければそれだけ至福の時間が長いので稼働が伸びる傾向にはなります。
しかし「その状態に突入すれば」ということを忘れてはいけません。
結局のところ導入初期にはその状態(大当たり中)まで遊技する人が多くとも、徐々にそういった人は少なくなっていきます。
そうなるとアウト(稼働)は急速に低下していくことになるでしょう。
導入後の実績データにおいて同じアウト数値があったとしても「より、大当たり消化時間の短い機種」のほうが遊技客の支持が高いといえ、長持ちすることになるはずです。
さらに実はもう一つ、大当たり消化時間の短い機種では「一日の大当たり回数が多くなる」という特性もあります。
下図②をご覧ください。
これは現在主力となっている遊技機においてアウト40,000個のときの大当たり回数(※初当たり回数)を計算したものです。
現在大当たり消化時間が圧倒的に短い機種の筆頭がP牙狼月虹ノ旅人(※2020年8月、連載当時)で、その初当たり回数は他機種よりも1回以上多くなります。
これにより視認する(呼び出しランプに表示される)データからも遊技への誘因が作られることになります。
■ 今後の遊技機選びは アウトの中身 を見ることも必要
これまでの遊技機の良し悪しの判断は導入後のアウト推移と、スペック面からその継続率や継続回数、特賞出玉(TY)の多寡で判断することが主流でした。しかしそれでは「遊技客目線の、遊技感」という視点が欠けていたことになります。
これまではスペックがほぼ横並びだったからそのような視点でもよかったのですが、今後はTOの数値からアウトの中身とその効果を考えることも必要です。
【今回のポイント】
・アウトは全体、その中身の考慮をする
・TOが短いと大当たり回数が増える
・スペックだけでなく体感的な遊技感も考慮する