ベース
この文章は月刊アミューズメントジャパン誌にて連載されている「基礎から再確認 パチンコ計数管理 」の第28回、2021年9月号に掲載されたものです。
改めてウェブ上にアップすることで連載内容のおさらいになるかな、と思いますので、今後も定期的にアミューズメントジャパン誌の連載をアップしてまいります。
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皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。
「計数管理」というとホールコンピュータの数字を分析し遊技機のメンテナンスに生かすことだと思われている方も多いと思います。
もちろんそれが主目的ではありますが、それ以外でも様々な場面で計数管理の知識が活用できます。
今回はベースが低いとゲーム性がどうなるか?についてお伝えします。
■ 遊技感への ベース の影響
ベース及びその関連項目についてはこの連載で過去2回、取り上げました。
・ベースとB%、BY(2020年5月11日アップ、AJ誌では2019年9月号)
・BYの重要性(2020年11月19日アップ、AJ誌では2020年4月号)
上記の回ではベースとその関連項目の計算方法、また活用方法について確認しています。
その過去の連載ではベースについて遊技客の遊技感、体感的なことを以下のような内容でお伝えしています。
・ベースは通常時の出玉率であること
・ベースは利益に直結すること
・1,000円当たりの回転数に影響すること
そして、今回は遊技機スペックへの影響について確認したいと思います。
■ 差玉について確認する
割数という指標があります。
これは出方を数値化したものであり計算式は「(売上玉-差玉)÷売上玉×10」(※機械割数での計算)なので、この数値が大きくなるのも小さくなるのも差玉の大小が影響することがわかります。
例) 売上20,000円(売上玉5,000個)
① 差玉 ‐1,000個
割数={5,000-(‐1,000)}÷5,000×10=12.0割
② 差玉 -2,000個
割数={5,000-(‐2,000)}÷5,000×10=14.0割
∴ 差玉が大きくなる(マイナスが増える)と、割数が上昇する
さてこの差玉は一般的には「アウト-セーフ」で計算をするのですが、実はもう一つ計算方法があるのです。
その計算方法とは「Bサ-TY」、その考え方は、
・アウトもセーフも「通常時」と「大当たり時」の2つの状態がある
・全体の差玉は「通常時の差玉」と「大当たり時の差玉」を足せば求められる
・通常時の差玉はBサであり、大当たり時の差玉の逆数がTYである
・ゆえに差玉は「Bサ+(-1×TY)」、つまり「Bサ-TY」で求められる
ということです。(下図①、②参照)
■ 射幸性はTYの大きさによる
パチンコにおいての楽しさの一つに「一撃性」があります。
これは大当たりした時のまとまった出方のことでこれを数値にあらわしたものがTYであり、この数値が大きいほど爆発力があり魅力的な機種になります。
しかし爆発力だけでは営業が成り立ちませんからそのために打ち込む時間を作らなければいけません。
爆発力を出す(TYを高める)ための方法として考えられるのが大当たり確率を低くすることであり、概ね「確率が辛ければTYが大きくなり、確率が甘ければTYは少なくなる」関係性があります。
下記の例はどちらの計算結果も11.1割になりますが、確率が辛い方が、よりTYが大きくなっています。
<例①>
ヘソ賞球4個 BY10.0、TS99 S5.2 客滞率200% TY1,390
B=(5.2×4)+10.0=30.8
BO=99÷5.2×100≒1,904
B%=100-30.8=69.2
Bサ=1,904×69.2%≒1,318
売上玉=1,318÷200%=659
差玉=1,318-1,390=▲72
機械割数={659-(-73)}÷659×10≒11.1割
<例②>
ヘソ賞球4個 BY10.0、TS319 S5.3 客滞率130% TY4,500
B=(5.3×4)+10.0=31.2
BO=319÷5.3×100≒6,019
B%=100-31.2=68.8
Bサ=6,019×68.8%≒4,141
売上玉=4,141÷130%≒3,185
差玉=4,141-4,500=▲359
機械割数={3,185-(-359)}÷3,185×10≒11.1割
■ ベース が低いとBサを大きくできることに注目
ここでBサとTYの関係に注目します。
「結果としての割数が11.1割」というのは、言い換えれば「売上玉の1.11倍の景品玉が出ている状態(売上玉の0.11倍の差玉が出ている状態)」ということなので、この関係性の差玉でさえあれば計算結果(機械割数)は変わらないことになります。
<例③>
上記例②においてヘソの賞球が3個になりベースが下がる(B31.2%→B25.9%)と、11.1割になるときのTYは4,850となる
B=(5.3×3)+10.0=25.9
BO=319÷5.3×100≒6,019
B%=100-25.9=74.1
Bサ=6,019×74.1%≒4,460
売上玉=4,460÷130%≒3,431
差玉=4,460-4,850=▲390
機械割数={3,431-(-390)}÷3,431×10≒11.1割
<例④>
上記例②においてヘソの賞球が3個になり且つBYが6.0となりさらにベースが下がる(B31.2%→B21.9%)と、11.1割になるときのTYは5,100となる
B=(5.3×3)+6.0=21.9
BO=319÷5.3×100≒6,019
B%=100-21.9=78.1
Bサ=6,019×78.1%≒4,701
売上玉=4,701÷130%≒3,616
差玉=4,701-5,100=▲399
機械割数={3,616-(-399)}÷3,616×10≒11.1割
この例③、例④のようにベースが低くなることで大当たり確率が変わらなくともBサが大きくなり、「売上玉の0.11倍の差玉」という同じ関係性を保ちながらもTYを大きくできることがわかります(ベース31.2%ならTY4,500、ベース25.9%ならTY4,850、ベース21.9%ならTY5,100)。
■ ベース値が低いほど、爆発力を高められる
同じ大当たり確率の機種であってもベース値が違うと1,000円スタートなど遊技客の遊技感が変わります。そしてベース値はそれだけでなく遊技機スペックの面においても爆発力=TY値の設計にも影響を与えるのです。
機種選定においては想定されるベース値がどのくらいの値なのかを確認することでその機種の射幸性を測ることができます。
【今回のポイント】
・TYの高低は大当たり確率だけでなくベースも影響する
・ベースが低いと、TYを大きくすることができる