計数管理
この文章は月刊アミューズメントジャパン誌にて連載されている「基礎から再確認 パチンコ計数管理 」の第30回、2021年11月号に掲載されたものです。
改めてウェブ上にアップすることで連載内容のおさらいになるかな、と思いますので、今後も定期的にアミューズメントジャパン誌の連載をアップしてまいります。
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皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。
2019年6月号からスタートした「基礎から学ぶ計数管理」、基本的な考え方は理解していただけましたか?
いよいよこの連載も残り2回で終了ということで前回から連載のまとめに入っています。
まとめ2回目の今回は「重要な用語の知識」を再確認します。
■ 覚えること、計算できることが目的ではない
仕事の目的は業績を向上させることです。
接客スキルや販促、広告宣伝などすべてがこの同じ目的に向かっての行動であり、計数管理も当然、その目的は業績の向上です。
用語の意味を覚えたり計算ができたりすることが目的ではありません。
計数管理を学ぶ意義は、用語を覚えるのはなく意味を理解し、計算をすることで遊技機の活用方法や稼働向上のための施策を考えることです。
「スタートが○○回なら利益率が△△になるので、平日はこの数字で営業しよう。」
「客滞率が○○%というのはグループ内でやや低い。ということは滞在しづらい環境になっているかもしれない。」
「現状の結果はやや利益率が低いが、スタートやベースから計算される想定利益率では適正になるはずだから、出たからと言ってスタートを下げる必要は
ないはずだ。」
勘や経験側、結果論で営業を進めるのではなく、数字という根拠を基に思考を展開していくためのツールが計数管理の知識です。
ただし思考を展開するには用語の理解は必須です。
では特に重要な用語の意味と計算式を確認していきましょう。
■ 遊技機の状態をコントロールする計数用語
計数管理で扱う用語と数値は大きく分けて、
・遊技機の状態を確認し、コントロールする項目
・店舗の営業状態を確認し、コントロールする項目
があります。
ではまず遊技機の状態をコントロールするもので特に重要な計数管理項目を確認します。
(1)スタート(S)
【意味】
通常時におけるアウト100個当たりの図柄確定回数(回転数)
【計算式】
{通常時の総回転数÷(アウト-特賞中のアウト)}×100
【例題】
通常時の総回転数 650回転
アウト 16,200発
特賞中のアウト 4,300発
{650回÷(16,200-4,300)}×100≒5.46回
遊技機の出方の大部分はこの数値でコントロールします。
この数値が高ければよく回り「出る」ことになりますが、かといって細かい違い(例えば5.46回と5.76回)が遊技客にわかるかと言えば、よほどの差がないとまずわかってもらえないです。
遊技客の体感的な部分を確認するには次に挙げる「ベース(B)」との関係で求められる1,000円当たりの回転数の方が良いでしょう。
(2)ベース(B)
【意味】
通常時の出玉率
【計算式】
ベースの計算式は2通りあります。
① (通常時のセーフ)÷(通常時のアウト)×100
② 有効回転数(S)×賞球数+S以外の払い出し数
【例題】
① (通常時のセーフ)÷(通常時のアウト)×100
アウト 13,000(特賞中アウト3,200)
セーフ 13,100(特賞中セーフ10,600)
(13,100-10,600)÷(13,000-3,200)×100≒25.5(%)
② 有効回転数(S)×賞球数+S以外の払い出し数
有効回転数 5.95回
賞球 3個
S以外の払い出し 7.65個
5.95回×3個+7.65=25.5(%)
ベースが高ければ玉持ちがよくなり遊技客は同じ消費金額で長く遊べます。
一方営業的には売上スピードが低下することになるのでこのバランスをとる必要がありますが、どのくらいに設定するかの判断はつきにくいと思います。
そこで遊技感でのSとBのバランスを見る指標として1000円スタートがあります。
(3)1,000円スタート
【意味】
1,000円で借りられる玉数が示された吸込率で減少していった時、最終的に打ち込める玉数(≒遊んだ時間)で何回転するか
【計算式】
ベースが出玉率なので、全体=100%からベース値を差し引くと吸込率(B%)が求められます。
吸込率(B%)=100%-B=100%-25.5%=74.5%
250玉÷B%×S
※250玉=1,000円での貸玉数(4円パチンコ)
【例題】
スタート(S) 5.46回
ベース(B) 25.5%
250÷(74.5)×5.46≒18.32回
遊技客は1分間あたりの回転数よりも1,000円当たりの回転数を重視すること、SとBの両方を使う計算で双方のバランスを確認できることから、最近ではこの数値を重視する傾向があります。
■ 店舗の営業状態を確認し、コントロールする項目
「営業状態」、つまり利益の計算及び全体の出方を確認する項目です。
重要ピックアップとして「機械割数」の意味と計算方法を確認します。
【意味】
遊技客が借りた玉数に対してどれだけの玉数を出したかの比率を表す
【計算式】
(売上玉-差玉)÷売上玉×10
【例題】
売上玉 5,000
アウト 24,000
セーフ 24,500
{5,000-(24,000-24,500)}÷5,000×10=11.0割
「なぜ、出た玉数が差玉だけではなく売上玉が必要なのか?」
これは、売上玉も遊技客の手元に払い出されるもののセーフ信号ではなく売上玉信号で上がるからです。
「売上玉と差玉を合わせたものが出た玉なのに、なぜ差玉を足さずに引き算するのか?」
これは、「差玉はアウト-セーフでお店側視点の数字であり、遊技客視点では逆の数字が必要となる」からです。
そして計算上は「差玉に-1を掛け算して足している」ことになり、表記ルール上は+を記載しないのでこのような計算式になります。
計算式を正確に記載するとするならば、
機械割数={売上玉+(-1×差玉))÷売上玉×10
となるでしょう。
■ 用語の意味を理解する
今回取り上げたスタート、ベース、1,000円スタート、機械割数はどれも日常的に使っている項目のはずです。
これらに限らず計数管理項目は単にホールコンピュータに表示された数値を確認するのではなくその意味を理解することで能動的に「使っていく」ことができるでしょう。
過去連載ではこれら以外の項目も一つ一つわかりやすく解説していますので、改めてバックナンバーをご覧いただきたいと思います。
【今回のポイント】
・計算式には意味がある
・覚えるのではなく、理解する
・理解すれば活用の幅が広がる
(了)