毎週水曜日更新、「 コンサルティングの現場 より 」
このコラムは毎週水曜日に更新します。
それでは今回も「ジリ貧パチンコホール復活プロジェクト」の内容についてお伝えします。
なお書籍の内容は以下のとおりとなっています。
第1章 苦境に立つパチンコホール営業の現状
第2章 データを「見る」から「分析する、活用する」
第3章 お金をかけずに集客
第4章 モチベーションを高めるスタッフ教育
第5章 玉粗利計画の見直しでリピート客を増やす
第6章 これからのホール営業に必要な13の意識改革
今回は第4章「モチベーションを高めるスタッフ教育」を簡単にまとめました。
人財不足は現場にとって資金不足と並ぶ大きな悩みごとです。近年は少子高齢化の影響を受けてパチンコ店だけでなく多くの業界が「人が足りない!」と悲鳴を上げています。地方郊外店では人手不足が深刻です。そういった店舗では「いかに既存のスタッフを成長させるか」がポイントなのはもちろん、「いかに辞めさせないか」も重要な管理点となります。
ただ、人がなぜ会社を辞めるか、その理由を間違えていてはスタッフの定着は図れません。
「安月給でこんなつらい仕事なんてしていられない」
これはよく耳にするフレーズであり、ごく自然な理屈に聞こえますが、人が仕事に向ける気持ちはそんなに単純なものではありません。ホールの現場では慢性的な人手不足ということもありいつも少ない人数で仕事をすることになるので、「辞めようとするのは仕事量が給与に見合わないからだ。仕事量に見合う給与に引き上げれば続けるはず。」という図式で考える会社もあります。しかしそれでは足りない要素があるのです。
業務の効率化について調査をした人物にオーストラリア生まれの心理学者エルトン・メイヨーがいます。メイヨーは「従業員の気持ちにアプローチすることで仕事の効率が上がる」ということを発見した人物として知られています。
アメリカのウェスタン・エレクトリック社で実験を行った彼は、職場の生産性に大きな影響を与えるのは環境や報酬ではなく「人間的・社会的なもの」であるということに気付き、立証しました。
当初この実験は以下の仮説を立証するために行われました。
・人の生産性や意欲は賃金、労働条件によって変化する
・賃金、労働条件が低いと生産性や意欲は減退し、高いと増進する
ところが実験結果は仮説とは真逆のものでした。従業員の生産性や意欲は賃金や労働条件に影響されるのではなく、むしろ人間関係や個人の労働観に大きく影響されていたのです。ホールの現場に当てはめると重労働や低賃金を理由に辞める人は少なく、多くは「働く意義が見つからなくなる」ために職を辞すると考えられるのです。
メイヨーは働く人のモチベーションが職場を監督する人間の言動次第で大きく変わることも明らかにしました。職場で次のようなメリットを感じることができたら、働く人の意欲は大きく高まるのです。
・従業員自身が職場の環境や生産目標の設定に参加できる
・従業員同士がコミュニケーションを取りながら和気あいあいと作業できる
・監督する人が不満や愚痴などの話を聞いてくれる
この条件に当てはまるような改善を考えるとするならば、
・スタッフの採用に主任や班長の意見を取り入れる
・定期的にスタッフの懇親会を開く
・店長がこまめにスタッフと話をする機会を作り、個人的な悩みや愚痴なども聞き取る
等となるでしょう。これら3つの対応が定着することで離職は減少し、今までと同じ人員でも人手不足の影響を感じる程度が軽減します。
またスタッフ教育のためにマニュアルを用意しているお店も多いことでしょう。しかしマニュアルを整備してもなかなか思ったような効果が上がらないと感じているお店も多いはずです。
実はマニュアルを整備しても効果が見られないのは、染みついている「風土」に原因があるのです。長く低迷状態が続くと「どうせ自分たちは~」という意識が蔓延し、新しく入ったスタッフも先輩たちの考えに染まっていきます。
お店にはそれぞれ形成してきた風土が存在します。人は職場のマニュアルやルールに従うのではなく風土に従う生き物であり、上から押しつけられた価値観ではなく、同じ立場の人間たちによって醸成された価値観を重視する性質があります。だからこそ、マニュアルの整備に力を入れるのではなく「良い風土の醸成」に力を入れていかなくてはならないのです。
行動には必ず理論的な根拠を求めて、論理的に進めることが必要です。これからは確実に業界のパイが縮まります。今までのように「勘と経験則」、「過去の成功体験」のみの営業は必ず行き詰まります。
これから必要なのは「データに基づいた分析と行動」、「論理的な思考と行動」です。「モチベーション管理も、論理的に」ですよ!